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歩くんですの箱 SS置き場

躍動感を表現するにはどうすればいいんだろう……と日々考え中。

忍「アリスが二人になりました!?」Part04

このSSは、18歳未満の方には不適切な表現を含みます。
お読みになる際は、自己責任でお願いいたします。

Part04 (Part03の続きです)
忍「変わらない幸せな日々がずっと続いていく、そんなことを思っていた時代が私にもありました」

忍「でも、そんな人の望みが叶えられていくたび、資源は少しずつ枯渇し、森林は少しずつ削られていきます」

忍「緩慢に蝕まれていくこの星で、否応なく訪れる困難を超えた先に、わたしたちにはいったい何が残るというのでしょう」

アリア「テスト勉強が嫌だからって壮大な言い訳をしたってムダだよ!?」

忍(……というわけで、今わたしは、わたしの部屋でアリアに英語を教わっています)

アリア「ほら、この単語の意味は?」

忍「……分からないです」

アリア「もう……、さっきやったばっかりだよ」

アリア「ほら、あと1ページだけだから、集中してがんばろう?」

忍「なら、頑張ったご褒美が欲しいです」

アリア「分かった。でも、あんまり変なのはダメだよ」

忍「分かってます。アリス、抱きしめてください」

アリア「抱きしめるだけ?そんなことで良いなら、いくらでもしてあげるよ」

忍「本当ですかっ!わたし、がんばります」

忍「えっと、この単語は……。こっちは……」カリカリカリ

アリア「すごい、いきなり集中し出した」

 ***

忍「はあ……、やっと終わりました」

アリア「頑張ったね、シノ」ダキッ

忍「えっと、アリス!?」

アリア「約束だったでしょ?頑張ったらご褒美をあげるって」

忍「はい、そうでした。えへへ」

……コンコン

忍「アリスは、すごくあったかいです」

……コンコン、コンコン

アリア「えへへ、シノもあったかい」

……コンコン

忍「もっとぎゅってしてください、アリス」

アリア「うん」ムギュッ

……

ガチャ

……

 ***

アリス(さっきからシノの部屋をノックしてるのに、全然返事がないよ……)

アリス(そういえば、昨日もそうだったよね……)

アリス(授業のときもなんだか変だったし、何かあったのかな……)

……

アリス(とりあえず部屋に入ってみよう……)

ガチャ

アリス「シノ、入るよ?」

忍「ほっぺ柔らかいですね。すりすりすると、とっても気持ちいいです」

アリス(えっ、えっ?)

アリス(シノが独り言いってるよ……。これはどういう状況なのかな)

アリス「あの……、シノ?一人で何してるの?」

忍「もっと頬ずりさせてください」

忍「……ふへへっ、気持ちいいです」

アリス「」

アリス(……わたしに気付いてないのかな)

アリス「ちょっと、シノぉー」

忍「ふにゃぁ……」

アリス「……ぜんぜん返事してくれないよ」

アリス「こんなに大きな声で呼んでるのに、わたしに気付かないの?」

アリス「それとも、シノはもしかしてわたしのことわざと無視して……」

 ***

忍「そして、ついにテストの時がやってきました……」

烏丸「はい、では配られた人から始めてくださいねー」

烏丸「小テストですから、制限時間は10分くらいです」

忍(はわわっ、頭が真っ白にっ)

忍(昨日覚えたことが頭からどんどん零れ落ちていくようです)

アリア「シノ、落ち着いてやれば大丈夫だよ」

忍「ありがとうございます、少し自信が沸いてきました」ヒソヒソ

忍「って、そうでした!わたしにはわたし専用のアリスがいるじゃないですかっ」ヒソヒソ

アリア「ダーメ、答え教えてあげたりはしないからね」

忍「まだ何も言ってないじゃないですか……」ヒソヒソ

忍(……とにかく集中しよう)

……

忍(やり遂げました……)

アリア「お疲れさま、シノ」

忍「ありがとうございます」

忍(実は、アリアの表情を見ていればある程度自分の書いた答えが合ってるか間違ってるかがほとんど分かってしまいます)

忍(なにせ、正解の時はすごく嬉しそうな顔になるし、間違っているときはとっても不安そうな表情をするんですから)

 ***

忍「昼休みです!」

カレン「納涼俳句大会の歴代優秀賞作品の一覧が手に入ったデース!」

陽子「ホントか!?」

カレン「さっき烏丸先生から受け取ったデス」

陽子「からすちゃん、意外と仕事が早いな」

忍「後でお礼をしに行かないとですね」

カレン「さて、ワタシたちも最優秀賞狙いに行きまショー!」

陽子「おお、やるからは本気ってことだなっ」

アリス「なんだか思っていたより大変なことに……」

綾「とりあえず、どんな作品が選ばれているのか見てみましょう」

……

陽子「ふむふむ」

綾「夏に行われる大会だけあって、夏に関する句が多いわね」

忍「意外と軽いノリでいいんですね」

陽子「というか、選考委員のセンスちょっと疑うぞ……。これが最優秀賞て」

ほあちゃぁあっ 夏だ浜辺だっ 紐ビキニだァ! ――モルタル戦士佐藤

綾「紐ビキニなんて……破廉恥だわ!」

陽子「そこかよっ」

アリス「これ俳句って呼んでいいのかな……」

陽子「ほあちゃぁあっ、とかもはや言葉ですらないぞ」

カレン「デスガ、迸る欲望がストレートに伝わって来マース」

アリス「いくらなんでもストレート過ぎだよ」

忍「佳作のほうは真面目ですよ」

狩人は 泥の汗跳ね 集うコミケ ――りんかる☆

綾「……真面目かどうかは分からないけど、最優秀賞よりはちゃんと作ってあるわね」

陽子「とにかく、あんまり本格的な大会じゃないみたいだな」

忍「これなら、気楽に応募できますね」

 ***

忍(その夜、アリアと一緒にリビングで俳句のテーマを考えていたら、お姉ちゃんがやってきました)

勇「納涼俳句大会?」

忍「はい、わたしたちで作った俳句を応募することになりました」

勇「へぇ、なんだか懐かしいわ」

忍「お姉ちゃん、この大会のこと知ってるんですか?」

勇「ええ。私の中学の頃のお友達が、その大会に句を応募したことがあったのよ」

忍「すごいです!どんなものを応募したか、覚えてますか?」

勇「ええ、今でもはっきり覚えているわ」

勇「『咳しても 父出迎える ただ一人』」

勇「残念ながら、賞を取ることはなかったけれど」

忍「どういう意味なんでしょう」

勇「忍、この町には、昔から伝わるこんな噂があるの」

勇「死んだ人の幽霊が蘇るって噂」

忍「なんだかちょっと怖いです」

勇「危害を加えたりするわけじゃないから、怖くは無いわ」

勇「もう一度その人に会いたいって強く願った人のところに、幽霊は現れるの」

勇「幽霊は、見た目は普通の人間と同じ。生前の姿そのままだし、会話も出来て、触れることもできるらしいわ」

勇「でも、その幽霊が見えるのは、その人にだけ。他の人には見ることも、気配を感じることすらできないの」

忍「なんだか悲しいです」

勇「私のお友達は、小学生の頃に父親を亡くしているの」

勇「でもある日、その父親が彼女の家に帰って来たらしいわ」

勇「かつての日々と同じように、ただいまって」

勇「何事もなかったかのように」

勇「とても寒い冬の日だった」

勇「でも、それに気付いたのは彼女だけだった」

勇「お父さんが帰って来たよ、って言ったら、ふざけんじゃないってママに叱られたって言ってたわ」

勇「彼女以外は、誰も父親の存在に気付かなかったの」

勇「その日以来、毎日彼女は外へ出かけていく父親を見送り、また帰りを待っていた」

勇「たとえ風邪を引いて、咳が出て辛い時でも、ね」

勇「だって、父親を出迎えることが出来るのは、世界でただ一人、彼女だけだったから」

忍「そんなの……寂しすぎます」

勇「そうね……」

忍「そのお父さんは、その後どうなったんですか?」

勇「冬の終わりには、またいなくなってしまったらしいわ」

勇「それ以来、二度と姿を見せてないって言ってた」

忍「そうですか……」

勇「でもそれは、悪いことではないと思うわ」

勇「生者は、いつかは前を向いて歩かなければいけないのだから」

トテトテ

アリス「シノー、お風呂上がったよ」

忍「あ、はい。では、わたしもお風呂に入ってきますね」

勇「しっかり湯船に浸かって温まるのよー」

 ***

忍(お風呂に入るのも、アリアと一緒です)

忍(アリアが一人でお風呂に入ると、わたし以外の人から見ればシャワーが無人で流れているように見えて怖いからです)

忍(ですが、アリアのきれいな金髪を洗ったり、背中を流したり、わたしから見れば何かと役得です!)

忍「アリス?」

アリア「……」

忍「おーい、アリスー」

アリア「……えっ、なに?シノ」

忍「どうしましたか?なんだか元気がないです」

アリア「ううん、そんなことない。いつも通りだよ」

忍「もしかして、さっきのお話を聞いて悲しくなりましたか?」

アリア「あ、えっと……。うん、そこにいるのに誰にも気づいてもらえないって、やっぱり悲しいよ」

忍「大丈夫です。アリスには、わたしがいるのですから」ギュっ

アリア「うん」

アリア「ありがとうね、いつもわたしを見てくれて」

忍「当たり前です。わたしは、アリスのことが大好きなんですから」

アリア「……うん」

アリア「ねえシノ、もう少し今のまま抱きしめててもらっていいかな?」

忍「はい、アリスがいいなら、いつまででも抱きしめてあげます」

アリア「それじゃあ長湯し過ぎてのぼせちゃうよ、えへへ」

忍「ふふっ。もうのぼせてるじゃないですか。顔真っ赤ですよ、アリス///」

アリア「シノだって赤いよ///」

忍「くすっ///」

アリア「えへへっ///」

 ***

アリス(シノの様子が気になって、シノがお風呂に入っている間お風呂場の前で聞き耳を立てていた)

アリス(この扉一枚超えた先に、一糸纏わぬシノが……)

アリス(っていやいや、何考えてるのわたし!?)

アリス「わたし、そんないやらしい目的でここにいるわけじゃないよ!?」

アリス(って誰に言い訳してるのわたし!?)

アリス(それにしても……)

アリス(さっきからお風呂場の中で、シノの独り言が聞こえる)

アリス(そういえば、さっきも部屋で独り言しゃべってたよね……)

アリス(まるで、いもしない誰かと会話しているみたい……)

アリス(わたしとは全然話してくれないのに)

アリス(どうして……)

Part05へ続く

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