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歩くんですの箱 SS置き場

躍動感を表現するにはどうすればいいんだろう……と日々考え中。

忍「アリスが二人になりました!?」Part08

このSSは、18歳未満の方には不適切な表現を含みます。
お読みになる際は、自己責任でお願いいたします。

Part08 (Part07の続きです)
忍(屋上――この場所は、ずっとアリアと二人きりの場所でした)

忍(二人っきりでお弁当を食べて)

忍(二人並んで寝転がって)

忍(一緒に雲を数えて)

忍(抱き合って、温もりを確かめ合った)

忍(……この場所だけが、アリアを守ってくれた)

忍(でも、この場所も、もう……)

忍(ああ、すぐ側にいるのに、アリアが遠く感じます)

忍(アリアがとても儚げに見えて……)

忍(風が吹けば、ふと消えてしまうんじゃないか)

忍(ふとよぎったそんな考えを、わたしは慌てて振り切ります)

忍(ダメだ、強くならなきゃ)

忍(みんなの声に耳を傾けてはいけません)

忍(みんながいたら、わたしはきっと、アリアの存在を否定してしまう)

忍(そうなったら、アリアは本当にいなくなってしまうでしょう)

忍(そんなの絶対にいやだから……)

忍(わたしは、たった一人にならなきゃいけません)

『咳しても 父出迎える ただ一人』

忍(もしかしたら、あの句を書いた人も、こんな思いだったのでしょうか……)

忍(だったら、今度は必ず辿り着いて見せましょう)

忍(あの日、あなたが望んだ結末に)

 ***

ガチャ

綾「陽子!シノは?」

陽子「来たか、綾!シノは……ふさぎこんでるみたいだ。ほら、ご覧の通り」

綾「頑なに耳を塞いで……何があったの?」

陽子「分からない。何も話してくれなんだ」

綾「どうするの?」

陽子「もちろん、シノを助けるさ」

綾「そんなの当たり前よ」

陽子「はは、そうだよな」

陽子「なあ、シノ」

忍「……」

陽子「アリスが風邪引いてるって、嘘なんじゃないか?」

忍「……っ!?」

陽子「その反応、その通りなんだな」

忍「……」

綾「どうして分かったの?」

陽子「なんとなく、かな。シノとアリスの間に、なにかあったんじゃないかって気がしてた」

陽子「風邪を引く前、アリスがなんだか、寂しそうに見えたから」

綾「本当によく見てるわね、さすが陽子だわ」

陽子「いや、大したことじゃないよ」

綾(呑気なようでいて、いつでも周りに気を配ってる。それがなにげなく出来てしまうのが陽子なんだわ)

綾「でも、そんな風に陽子に見られてるアリスが、少し羨ましくもあるわね」ボソッ

陽子「どうかしたの、綾?」

綾「いえ、なんでもないわ」

綾(アリスが感じていた寂しさ、少しわかるような気がする)

綾(私も陽子に嫌われたら、きっと同じことを考えると思うから)

綾「きっとアリスは、シノに嫌われたと思ってるんじゃないかしら」

忍「えっ……?」

綾「部屋に引き籠ったのも、きっとシノが少しでも自分と顔を合わせなくていいようにって」

忍「そんなっ、嫌われたのはわたしで、アリスは……」

忍(どうしてでしょう。みんなと関わったりしたらいけないのに、勝手に言葉が口をついて出てきます……)

忍「わたしは……わたしはアリスのことが大好きなんです。嫌いになるわけないじゃないですかっ」

忍(ああ、止められません。このままじゃ、アリアは消えてしまうのに……っ)

綾「だったら、それをアリスに伝えに行きましょう?」

忍「ダメですよ……。だって、アリスは言ったんです」

忍「わたしのことなんか、大嫌いだって」

忍(あのときのアリスの言葉を思い出すと、涙が溢れ出てきます)

忍(わたし、思った以上にショックを受けていたんでしょうか)

忍(アリスに嫌われたことに……)

陽子「アリスに嫌われたって、本当にそう思ってる?」

忍「はい……。だって、アリスがはっきりと……っ」

陽子「いい加減にしろ!」

忍「!?」ビクッ

陽子「だったら、どうしてアリスは悲しんでるんだ」

忍「それは……」

綾「シノ、あなたの気持ちを、アリスに伝えてあげて」

綾「あの子は、シノを待ってるんだから」

忍「でも……」

忍(ダメです。アリアを守らなきゃいけないのに……)

忍(たったこれだけのことで、もう決意が揺らいでいます……)

忍(アリアには、わたししかいないのに……)

忍(たった一人にならなきゃいけないのに……っ)

アリア「シノ。もう、いいんだよ」

忍「アリア?」

アリア「あははっ、やっと名前で呼んでくれたね」

忍「アリア……?」

アリア「うん。その名前で呼んでくれたのは、初めて」

忍「そっか……。わたし、ずっとあなたのことアリスって……」

忍(ああ、わたしは、なんて残酷なことをしてきたのでしょうか)

忍「ごめんなさい」

忍「結局、わたしはアリアのこと、アリスの代わりとしか見てなかったみたいです」

忍「ほんとに……ごめんなさいっ」

アリア「ううん。そんなことない」

アリア「だってシノは、わたしにこの名前を付けてくれた」

忍「でも……」

アリア「わたし、とっても嬉しかったんだ」

アリア「生まれることさえできなかったわたしに、シノが名前をくれたから」

忍「そんな……わたしは、ただ……」

アリア「それにシノは、わたしを守ろうと一生懸命頑張ってくれたよね」

忍「違う、わたしは……っ」

アリア「ううん、十分だよ」

アリア「本当に、ありがとう」

アリア「あなたは、お姉ちゃんのところに行ってあげて」

……

アリア「さよなら、シノ」

忍「アリアっ!!」

忍(すでに、アリアの姿はぼんやりと霞んで、消えかかっていました)

忍(あれだけ抱き合ったアリアの温もりも、唇のやわらかさも、胸の膨らみも肌の感触も……)

忍(何もかもが夢だったかのように一瞬で溶け落ちていきます)

忍「ううっ……アリア……アリアぁっ」

忍「うぅうわああああああああああああっ」

忍(もう、アリアの姿を見ることも、声も聴くことも出来ません)

忍(アリアが消え去った虚空に伸ばした手は、力なく空を切ってコンクリートの地面にぶつかりました)

忍(しゃがみこんだわたしの足元に、大粒の涙が次々と落ちて水たまりをつくっています)

忍(その水面には、かつてアリアと雲を数えた、あの空が映っていました)

忍(わたしは、なんてバカだったんでしょう)

忍(アリアがこの世にいられる時間はほんのわずかだったのに)

忍(そのわずかな時間すら、自分として生きることもできなくて……)

忍(わたしが、アリアをアリスの代わりにしたから……)

忍(そのせいで、二人とも傷つけてしまったんだ……)

忍(わたし……本当に最低です)

……

忍(突然、こどものようになきじゃくるわたしの両腕が掴まれ、引っ張り上げられました)

陽子「シノ、あんまり泣いてる暇はないみたいだ」

忍「えっ?」

綾「アリスのところに急行よっ」

Part09へ続く

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