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歩くんですの箱 SS置き場

躍動感を表現するにはどうすればいいんだろう……と日々考え中。

【SS】穂乃果×雪穂(Part04)

Part04 (Part03の続きです)
【翌日・教室】

亜里沙「おはよう、雪穂」

雪穂「……」

亜里沙「おーい、雪穂」

雪穂「……」

亜里沙「どうしたの?またぼうっとしてる?」

雪穂「うるさいよ亜里沙」

亜里沙「雪穂……?」

雪穂「どっか行って。目障りだから」

亜里沙「ご、ごめん……」

 ***

亜里沙(どうしたのかな、雪穂。私、なにか雪穂に悪いことしちゃったのかな……)

 ***

【昼休み】

亜里沙「ねえ、雪穂」

雪穂「……」

亜里沙「ごめんね。私、雪穂を怒らせるようなことしちゃったんだよね」

亜里沙「あの……ホントにごめんね。だけど、私、どうして雪穂が怒ってるのか分からなくて、えっと……」

雪穂「……自分でも何が悪いのかも分からないのに謝ってるわけ?ばっかみたい」

亜里沙「えっと、ホントにごめん……。だけど、心当たりが全然なくて。だから、ちゃんと言ってほしいな。私が何をしちゃったのか」

雪穂「亜里沙には関係ない。気が散るからどっか行ってよ」

亜里沙「……うん、分かった」

雪穂「……」

亜里沙「ねえ、雪穂。私は、ずっと雪穂の味方だからね」

雪穂「……」

 ***

【放課後・神田明神】

亜里沙「……ってことがあったんです。雪穂ちゃん、ぜんぜんまともに口を聞いてくれませんでした」

希「そんな、あの雪穂ちゃんが……」

亜里沙「はい。きっと、私、すごく酷いことをしたんだと思うんです。なのに、私はそれを思い出せない」

亜里沙「私は、本当に酷い人間です」

希「亜里沙ちゃんは悪くない。だから、そんなに自分を責めんといて」

亜里沙「でも……っ!」

希「落ち着いて。雪穂ちゃんの態度がおかしくなったのは、今日の朝からなんやろ?」

亜里沙「はい。昨日、学校で別れたときはいつも通りでした」

希「なら、その後から今日の朝までの間に何かがあったってことやな」

亜里沙「その間に、私が何かしたんでしょうか。でも、昨日別れてから今日の朝学校に行くまで雪穂とは一度も会ってないし……」

希「もう一度言うよ。亜里沙ちゃんは悪くない」

亜里沙「だったら、なぜ……」

希「悪くないけど、無関係ってわけではないやろな」

亜里沙「やっぱり、私、なにかとんでもないことをっ」

希「落ち着いて、ウチの推測を聞いてくれるかな」

亜里沙「は、はいっ」

希「実は、昨日の放課後、雪穂ちゃんはこの神社に来なかったんや」

希「ここ最近で、雪穂ちゃんがここへ来ないことなんて一度もなかった」

希「だから、おかしいと思ったんや」

希「もちろん、何か用事があったとか、体調が悪かったとか、いろいろ原因は考えられるんよ」

希「けどな、今の亜里沙ちゃんの話を聞く限り、ほぼ間違いないやろね」

亜里沙「どういうことでしょう?」

希「雪穂ちゃんは、昨日神社に来ていたんや。でも、ウチに顔を見せにはこなかった」

亜里沙「なぜです?雪穂は、希さんに会うためにここに来ているんじゃないですか?」

希「そう。でも、彼女は偶然見てしまった。ウチと亜里沙ちゃんが境内で立ち話をしているのを」

亜里沙「хорошо……」

希「そのとき、雪穂ちゃんが何を考えたのかは分からない。でも、彼女はウチらを見た瞬間、とっさに木の陰かなにかに隠れたんやろな」

希「そして、ウチらが話しているのを聞いてしまった」

亜里沙「そういう……ことだったんですね」

希「きっと、雪穂ちゃんはもう、実の姉への想いを諦める道を選んでいる」

希「それが、彼女が心に決めたことなんだとしても」

希「それでも亜里沙ちゃんは、雪穂ちゃんの恋を応援するつもりなん?」

亜里沙「もちろんです。だって、雪穂は今すごく苦しんでる。辛くて、でも誰にも言えなくて、心の中で泣き叫んでる。私には、その声が聞こえます」

亜里沙「だから……、私は、雪穂の力になりたい。雪穂ちゃんが心の底から願ってることなら、応援してあげたいです」

希「そっか。なら、雪穂ちゃんのところに行ってあげて?今、その木の陰におるから」

亜里沙「え?」

??「」ガサゴソ、サッ

亜里沙「えっ、雪穂!?」

希「亜里沙ちゃん、雪穂ちゃんを追って!」

亜里沙「はっ、はい!」

 ***

亜里沙(雪穂の足は、予想以上に早かった)

亜里沙(一気に速度をつけたと思ったら、急に方向転換して横道に入っていったり)

亜里沙(何度も見失いそうになった)

亜里沙(ここが知らない土地だったら、もうとっくに見失っていただろう)

亜里沙(土地勘を頼りに、雪穂が選びそうな逃げ道を予想しながら、なんとか追い続けた)

亜里沙(どのくらい走り回ったかは分からない)

亜里沙(夏の気配を帯びた生ぬるい風が体にまとわりついて来て)

亜里沙(視界が汗で滲んできて、もう自分がどこを走っているのかも分からなくなってきたけど)

亜里沙(それでも、私は何とか雪穂を追い続けていた)

亜里沙(角を曲がった先で、物陰に隠れて私をやり過ごそうとしているところを見つけて)

亜里沙「追いかけっこは終わりだよ……っ」

 ***

雪穂(咄嗟に逃げ出してしまった)

雪穂(まさか、木の陰に隠れて二人の会話を聞いていたのが気付かれているなんて思わなかったけど)

雪穂(と、とにかく逃げなきゃ)

雪穂(捕まったらダメだ……なんとか追っ手を、亜里沙を振り切らなきゃ……っ)

雪穂(あれ?私、なんで逃げてるんだろう……)

雪穂(こんなに必死になって、汗だくになってまで、私は何から逃げているのか)

雪穂(ダメだ、もう、走れないよ……)

雪穂(でも、逃げ切らなきゃ……)

雪穂(あの角を曲がって、すぐに物陰に隠れればっ)サッ

雪穂(よし!これで、亜里沙は私を見失って、やり過ごしてくれれば……っ)

亜里沙「追いかけっこは終わりだよ……っ」

雪穂「あっ」

雪穂(まずい!見つかった)

亜里沙「ダメっ。逃げないで……私の話を……聞いて……っ」

雪穂(背後は壁と障害物。もうダメだ、逃げ場はない)

雪穂「私には亜里沙と話すことなんてない!どっか行ってよ……っ」

亜里沙「ねえ、雪穂。穂乃果さんのこと、もっとよく考えて」

雪穂「……うるさいうるさい!あんたに、何が分かるって言うのよっ」

亜里沙「確かに、私に雪穂の気持ちは分からない。でも」

亜里沙「今の雪穂が、自分自身の気持ちから逃げ出しているっていうのは分かる」

雪穂「……」

亜里沙「ねえ。雪穂は、なにから逃げているの?」

雪穂「逃げてるって……そういう言い方やめてよ。私にどうしろっていうの?」

亜里沙「どんなに逃れようとしたって、自分の気持ちから逃げ切ることなんて出来ない。そんなんじゃ、いつまでも辛いだけだよ」

雪穂「横から口をはさむだけなら簡単だよ……。でも、私は自分自身の『間違い』に苦しみつづけなきゃいけないの。私の気持ち?そんなものがどうしたって?それが間違ってるなら、今すぐ捨てるべきよ」

亜里沙「自分の本心を『間違い』だなんて言っちゃだめだよ」

雪穂「『間違い』は『間違い』でしょ。何か問題があるの?」

亜里沙「人を好きになるって感情が、間違ってるわけないよ」

雪穂「例え、その感情が実の姉に向けられたものだとしても?」

亜里沙「うん。確かに、そういうのは世間では普通じゃないのかも知れないけど……でも、そんなのは関係ないよ。大切なのは、自分がどうしたいのか。そうでしょ?」

雪穂「ふーん。だったらさ、亜里沙」

亜里沙「なに?」

雪穂「もし、亜里沙が絵里さんから『亜里沙、好きよ。付き合って』って言われたらどうするの?姉がそういう気持ちを持ってることを知って、亜里沙は平気でいられるの?」

亜里沙「そ、それは……」

雪穂「今、口ごもったよね。それが答えだよ」

亜里沙「で、でも!私一人の例を取り上げるのはおかしいよ」

雪穂「違う。あなたみたいな反応をするのがごく普通なの。お姉ちゃんだって、私の気持ちを知ったら、私を疎ましく思うに決まってる」

亜里沙「……確かに、気持ちを知ってしまったら、今まで通りじゃいられなくなると思う。でも、私が穂乃果さんの立場だったら、やっぱり本当の気持ちを知りたいって思うよ」

雪穂「他人事だからって、無責任なこと言わないで!」

亜里沙「そんなっ……。私は、私なりに考えて……」

雪穂「そうでしょうね。でも、私はそれ以上に、自分なりに考えて結論を出してるの」

雪穂「本当に私たちのことを思ってるなら、これ以上このことに口を挟まないで」

亜里沙「で、でも……」

雪穂「今日一日、亜里沙に辛く当たったことは謝るわ。だから、今から私たちはいつも通り。亜里沙は、何も知らない私の友達。私も、お姉ちゃんに恋心なんて抱いてない、ただの普通の女子中学生。それでいいでしょ?」

亜里沙「雪穂……」

希「結局、お姉ちゃんに嫌われるのが嫌、っていうこと?」

亜里沙「希さん!?」

希「こんなところにおったんやね。このカードがなければ、きっと見つけられんかったよ」

亜里沙「恐るべし、カードの実力……」

希「で、雪穂ちゃん。ウチの質問に答えてくれるかな?」

雪穂「そりゃ、嫌われるのは怖い。決まってるじゃないですか。大好きな人に嫌われるなんて、こんなに辛いことはありません」

雪穂「でも、それだけじゃありません。きっと、お姉ちゃんは、こんな妹を持ってしまったことを忌まわしいと思うでしょう」

雪穂「家族に忌むべき者がいるのは、とても辛いことです。それに、お姉ちゃんは優しいから……きっと私を忌み嫌う自分自身を責め、追い詰める」

雪穂「それは嫌なんです。お姉ちゃんには、幸せに生きてほしい。私のせいで不幸になって欲しくなんかない」

希「そっか。雪穂ちゃんは、本当にお姉ちゃん想いやね」

希「でも、穂乃果ちゃんはそんなことで雪穂ちゃんを疎ましいなんて思ったりしないよ」

雪穂「そんなはずありません!」

希「どうしてそう言い切れるん?」

雪穂「普通は、血の繋がった姉妹の、しかも同性から告白されて嫌がらない人なんていませんよ」

亜里沙「……」

希「普通はそうかも知れんね。でも、穂乃果ちゃんは雪穂ちゃんの姉やで。実のお姉ちゃんを好きになってしまうような、変わった女の子のお姉ちゃんやで」

雪穂「あははっ、それもそうか」

希「本当は、雪穂ちゃんが一番よく知ってるやろ。お姉ちゃんが、このくらいのことで雪穂ちゃんのことを邪魔者扱いするような子じゃないってこと」

雪穂「そうですね。でも、それでもやっぱり問題はあります」

雪穂「仮にお姉ちゃんが私を嫌わなかったとして……それどころか、告白を受け入れて、付き合ってくれたとしても」

雪穂「世間は、私たちを受け入れてはくれません」

雪穂「この国では同性婚は認められていないし、もちろん肉親との結婚も認められていません」

雪穂「そんな法律の問題は抜きにしても、心情的にだって、私たちを受け入れてくれる人なんかほとんどいないでしょう」

雪穂「私一人が後ろ指を指されるならまだいい。でも、お姉ちゃんまで世間から邪魔者扱いされるのは耐えられません」

希「雪穂ちゃんは、自分でなんでも背負おうとし過ぎなんよ」

希「さっきから聞いてると、雪穂ちゃんは自分の行動次第でお姉ちゃんの人生が全部決まるかのような言い方しとるけど、それはちょっと見当違いとちゃうかな」

希「確かに、雪穂ちゃん自身の気持ちをお姉ちゃんに知らせるか知らせないかは雪穂ちゃんの問題やけど、その気持ちを知った穂乃果ちゃんがどうするかは穂乃果ちゃんの問題やん?」

希「その気持ちを受け入れるのも、受け流すのも、あとは穂乃果ちゃん次第。穂乃果ちゃん自身の問題」

雪穂「お姉ちゃん、自身の問題……」

希「そう。その先の未来は、雪穂ちゃん一人の問題やなくて、雪穂ちゃんと穂乃果ちゃん、二人の問題なんよ」

雪穂「……私が何も言わなければ、お姉ちゃんが背負わなきゃいけない問題が一つ減ります」

希「そんなん気にせんでええやん。妹が辛いなら、姉ならちょっとくらい肩の荷を背負うくらいでないと」

雪穂「……ふふっ。希さんが言うと、なぜか説得力がありますよね」

希「あんまし褒めんといて。照れるやん///」

雪穂「あ、なんだか新鮮ですね。そっか、案外褒められるのに弱いんですね。覚えておきます」

希「うっ、勘弁したって」

雪穂「冗談ですよ。それにしても、希さんに言われたらなんだかその通りだと言う気がしてきました」

雪穂「お姉ちゃんったら、こんなに妹を悩ませて、一体何様のつもりなんですかね」

希「お、ようやく元気になった」

雪穂「なんだか踏ん切りがつきました。私、お姉ちゃんにガツンと気持ちをぶつけてきます」

希「その意気や!」

希「いざとなっても、ウチと亜里沙ちゃんがついてる。きっと、μ’sのみんなも応援してくれるよ」

雪穂「ありがとうございます、希さん。亜里沙も、ありがとね」

亜里沙「あ、うん。結局、私全然活躍できてないけど……」

雪穂「そんなことないよ。亜里沙が追いかけてこなかったら、今でもきっと自分の気持ちから必死に目をそらしてたもん」

亜里沙「良かった。私、途中から空気だったから、全然役に立ててないんじゃないかって……。とにかく、頑張ってね、雪穂ちゃん」

雪穂「うん!全力で当たって、全力で砕けるよ!」

希「ウチも、応援しとるよ」

雪穂「はい!ありがとうございます!」

希「あっ、行く前に運気上昇のワシワシやっとく?」

雪穂「謹んで遠慮申し上げます」

希「残念……」

雪穂「では。結果の報告、心待ちにしてて下さいね!」

希「うん、楽しみにしとるよ!」

 ……


Part05へ続く

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