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歩くんですの箱 SS置き場

躍動感を表現するにはどうすればいいんだろう……と日々考え中。

【SS】穂乃果×雪穂(Part02)

Part02 (Part01の続きです)
【数日後・神田明神】

希「ここんとこ、よく来てくれはるなぁ」

雪穂「あはは……、もう習慣になっちゃったみたいです。一日一回は希さんの顔を見ないと、なんだか落ち着かなくて」

希「ウチも、一日一回雪穂ちゃんの顔見なきゃ寂しくて死んでまう体になってもうたよ」

雪穂「……そういえば、希さんって、神道のこと以外でも、いろいろ占いとか詳しいですよね」

希「そうやね。タロットに風水、西洋占星術に易。なんでもいけるで」

雪穂「そういうのに興味を持ったきっかけって何なんですか?ほら、こう言っちゃなんですけど、今時そういうの信じてる人って少ないじゃないですか」

希「雪穂ちゃんは、そういうのはあんまり信じない方?」

雪穂「どちらかといえば……あんまり信じない方だと思います」

希「そっか。当たるも八卦、当たらぬも八卦。占いなんてそんなもんや」

希「科学的な根拠に基づくもんでもないから、信じないのが普通やろな」

雪穂「そうですか。なんだか、希さんがそういうこと言うのって、ちょっと意外です」

希「けどな、占いには、人の強い思いが込められるんや」

雪穂「思い、ですか?」

希「そう。占いは昔、国の大事なこと決めるのに使われとった」

雪穂「聞いたことがあります」

希「例えば、卑弥呼なんかは動物の骨を焼いてその割れ方で占ったと伝えられとるな」

雪穂「ああ、なんか教科書にそんなこと書いてあったかも」

希「戦略レベルでの決定には、あまりに多くの問題が複雑に絡み合ってくる。でも、それらをすべて考慮することなんてできんやろ。意思決定がもたらす結果の重大さに比べて、私たちの力はあまりに無力や」

雪穂「だからこそ、占いに頼ったんですね」

希「きっとそうやと思う。今でも、大きな影響力を持つ政治家や企業経営者が、占いの結果を受けて物事を決めるなんてことは珍しくないんやで」

雪穂「そうなんですか、なんだか意外です」

希「実験や観察に基づいて、自然を数値的にとらえていく。要は今の科学みたいな方法論が行われ始めたのは14世紀頃の話やけど、そのはるか以前から数学なんかはあったし、実際プトレマイオスなんかはそれで地球の半径を計算したりもしていたな」

雪穂「機械論的自然観、ってやつですね」

希「さすが受験生。よく知っとるね。そう、つまり、ずいぶん昔から機械論的に自然を考察していく発想はあったんや」

希「にも関わらず、これほどまでに世界中で様々な種類の占いが生まれ、発展してきた。不思議なことやと思わん?」

雪穂「言われてみれば……」

希「今でこそ科学万能なんて言われる時代になったけど、それでも実際には、物理や化学の力で扱えないことが現実には沢山ある」

雪穂「まだ分かってないことが沢山ありますからね」

希「その通りや。渋滞が発生する原理ですら、はっきりとしたことはまだまだ解明してない」

雪穂「そういえばどこかで聞いたことあります」

希「あまりに複雑に入り組んだ事柄を解決するのに、科学では力が及ばないことがある」

希「理論的には厳密に計算することが出来るとしても、現実はそう簡単じゃないんよ」

雪穂「そういうものなんですか?」

希「例えば、天気予報はいつも当たる訳じゃない。各地点の気圧とか、湿度とか、そういったものを正確に知り、そこから理論的に導いていけば、必ず天気は予測できるはずなのに」

雪穂「自然が、化学や物理を超えることもあるんですね?」

希「そういうこともあるかも知れんけど、この場合はもっと単純な理由なんよ」

雪穂「というと?」

希「厳密に天気を予測するためなら、地球上のあらゆる地点と高度での気温や気圧、湿度を知り、細かく計算していく必要がある」

希「これは、3次元の計算になるんやけど、そうすると膨大な計算量になるんや」

希「下手をすれば、今のスーパーコンピューターをもってしても何億年もかかるような計算量になってしまう。せやから、ある程度大雑把に計算することしか出来ないんよ」

雪穂「なるほど……。天気予報が外れると、気象庁なにやってんだー!って怒りたくなりますけど、これからは少し寛容になろうと思います」

希「同じように、現実の、例えば外交戦略みたいな大きな政治判断なんかをとってみれば、絡んでくる物事はあまりに複雑や。そんなあらゆる影響をすべて計算式に入れるなんて出来ない」

雪穂「確かに……」

希「でも、どんなにそれが難しい判断でも、必ず決定はせなあかん。そんな時、人間は何か拠りどころを求めるんや」

希「それが宗教であったり、占いであったり、あるいは誰か尊敬できる人の言葉かも知れん」

希「占いには、確かに荒唐無稽な理屈がいくらでも含まれてると思う。でも、それはどれも人の拠りどころとなるために編み出されたもんなんや」

雪穂「苦難に立ち向かって生きる人間の営み、それが占いなんですね」

希「そうとも言えるね。ウチは、占いそのものを信じてる訳じゃない。けど、占いを信じる人の力は信じるで」

雪穂「なるほど……。占いは、昔の人たちの苦労や努力から生まれた知恵なんですね。とっても勉強になりました」

希「誰でも、辛い時には何かに頼りたくなるものや。普段はそれを信じてなんかいなくても、せめて験くらいは担いでおきたくなる」

雪穂「そうかも……知れませんね」

希「雪穂ちゃんもそうなんやない?毎日この神社にお参りに来る理由、本当に神様がいると信じてるからではないやろ?」

雪穂「あはは……、希さんは鋭いですね」

希「何か悩みがあるなら、ウチで良ければ相談に乗るよ」

雪穂「ありがとうございます。でも、大丈夫です。毎日ここにくるのは、ただの合格祈願の験担ぎですから」

希「……そっか。ほな、また明日も来てな。ウチ、雪穂ちゃんの顔が見れんのは寂しいから」

雪穂「もちろんです!私も、一日一回は希さんの顔見ないと寂しくて仕方ないですから」

 ***

雪穂「占いを信じる人の力を信じる、か……」

雪穂「そっか。どうしようもないことに立ち向かうには、拠りどころがないとダメなんだ」

雪穂「なら、私のこのどうしようもない思いは……」

 ***

雪穂(この気持ちを断ち切るきっかけが欲しかった)

雪穂(距離というあまりに即物的で、でも絶対的な壁が、私のこの想いを断ち切ってくれるなら)

雪穂(そして、私が正しい世界の一員になれるなら……)

雪穂(地方の高齢化、人口減少は、少しずつ深刻さを増していた)

雪穂(それはすなわち、農村からも人がどんどんいなくなっているということで……)

雪穂(このまま都市だけが肥大化し、地方から人がいなくなってしまったら)

雪穂(そうして、食糧自給の仕組みを完全に失ってしまったら……この国は、どうなってしまうのだろう)

雪穂(私に出来ることなんてほんのわずかかも知れないけれど、でも、何とかしたいって思った)

雪穂(農業の未来と、私の未来のためにやらなきゃいけないこと)

雪穂(それは一致している)

雪穂(だから、私が今やっていることは、正しいこと)

 ***

雪穂(それなのに……)

 ~ ~ ~

穂乃果「お帰り、雪穂!」

雪穂「ただいま、お姉ちゃーんっ」ダキッ

穂乃果「元気そうで良かったよ!」

雪穂「うん。だって、お姉ちゃんに会えるの、ずっと楽しみにしてたもん」

穂乃果「そっかぁ。私もこの半年間、雪穂がいなくて寂しかったよ」

雪穂「そうなんだ。お姉ちゃんの寂しがり屋ー」

穂乃果「雪穂だってずっとそうだったクセに」

雪穂「そ、そんな訳ないでしょ///」

雪穂「それよりお姉ちゃん、受験勉強は進んでるの?」

穂乃果「あはは……。ぼちぼち?」メソラシ

雪穂「全然やってないんだ……」

穂乃果「うっ」

雪穂「もー、お姉ちゃんったら」

穂乃果「これから!そう、これから本気出すの!」

雪穂「完全にダメな人だ……」

雪穂「あ、そういえば、久しぶりにお姉ちゃん達が歌ってる姿見たいな」

穂乃果「もちろんOKだよ!さっそくみんなを集めてみるよ」

 ……

雪穂「すごい……。μ’sのみなさん、相変わらずカッコいいです!」

海未「喜んでもらえたなら何よりです」

ことり「今やったのは、今度の学園祭でやる予定の曲なんだ。まだ振り付けとか仮のところもあるんだけど……」

雪穂「そうなんですか!私だけ先に見せてもらっちゃって、なんだか得した気分」

穂乃果「あ、そういえばね、雪穂に紹介しておきたい人がいるんだ」

雪穂「そうなの?」

穂乃果「実はね、私、付き合ってる人がいるの」

雪穂「……えっ」

穂乃果「とってもいい人なんだよ。雪穂にも一度会っておいてもらいたいなって」

雪穂「そ、そんなっ」

雪穂「うわああああああああああああああああああ」

………………

 ~ ~ ~

雪穂(っ……、また夢……)

雪穂(心臓に悪いよ、お姉ちゃんに、彼氏、なんて……)

雪穂(でも、夢で良かった。もし、ホントにお姉ちゃんが誰かと付き合い始めるなんてことになっちゃったら……)

雪穂(あれ……?私、なんでそんなこと考えちゃうの?)

雪穂(違う。将来、誰かと付き合い始めるのは自然なこと)

雪穂(もしその日が来たら、私はお姉ちゃんのこと応援しなくちゃいけない)

雪穂(なのに、私……絶対そんなのは嫌だって思ってしまう)

雪穂(お姉ちゃんへの想い、絶対に断ち切るって決めたのに)

雪穂(私、ホントにダメな妹だ……)

 ***

……

 ***

【翌日・教室】

亜里沙「雪穂、お昼食べよう?」

雪穂「……」

亜里沙「雪穂、聞いてる?」

雪穂「……え?う、うん。どうかした?」

亜里沙「だから、一緒にお昼食べようって……」

雪穂「あ、そっか、うん」

亜里沙「……なんだか最近、ぼうっとしてることが多いよね、雪穂」

雪穂「最近、あんまり寝れなくて……暑くなってきたからかな」

亜里沙「……ねえ、何か悩んでることがあるなら、相談に乗るよ」

雪穂「え?あっと……、ううん。全然大丈夫」

亜里沙「話したくないなら無理には聞かないけど……。でもね、亜里沙はいつも、雪穂の味方だよ」

雪穂「ありがと、亜里沙」

亜里沙(どうしたのかな、雪穂。やっぱり、何か悩んでる……)

Part03へ続く

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