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歩くんですの箱 SS置き場

躍動感を表現するにはどうすればいいんだろう……と日々考え中。

【虹ヶ咲SS】かすみ「今日こそはりな子の素顔を暴いて見せる!」


かすみ「りな子ってさー」

瑠奈「ん、どうしたのかすみちゃん?」

かすみ「アイドルなのになんで顔隠してるのー?」

瑠奈「それはいっつも言ってるけど、私、感情を表に出すのが苦手だから」

かすみ「ウソだよねそれ?」

瑠奈「えっ……」

かすみ「あっ、動揺してる!なんだっけその」

瑠奈「瑠奈ちゃんボード」

かすみ「そう、それ。それ越しでも動揺してるのがはっきり分かるよ。そうやってさ、顔隠しててもこーんなに感情が伝わるんだから、りな子って実はとーっても表情豊かだよね?」

瑠奈「そんなわけない!私は、本当に感情を表現するのが苦手なの……」

かすみ「ふっふっふっ、そんな言葉じゃ百戦錬磨のかすみんは騙されないよ。聞かせてみなさい!りな子のひ・み・つ♪」

瑠奈「いや……」

かすみ「さー、りな子のトビキリのネタ、噂話にしてライブに来てくれた皆に流しちゃうぞー!りな子のファンは幻滅、そして相対的にかすみんの人気がうなぎ上りに……っ」

瑠奈「いや本音出てるって」

かすみ「あーあー、しまった今のは内緒だったのにぃー!とっ、とにかく忘れて、ねっ!」

瑠奈「ふふっ、かすみちゃん面白い」

かすみ「えー、かすみん、『面白い』って言われるより『カワイイ☆』って言われたいー」

瑠奈「いいよ、話しても」

かすみ「へ?本当に話してくれるの?」

瑠奈「うん、いいよ。隠してるの、本当は辛かったから」

かすみ「本当にいいの?きっと、かすみんそんなネタ知っちゃったらきっとすっごく悪いことに使うよ?ぜったいりな子を陥れちゃうよ?」

瑠奈「そっか、陥れちゃうか。しょうがない、それでも話すよ。信じてもらえるかは分からないけど」

かすみ「ご……ごくり」

 ***

アキバドームで起きた新興宗教教祖暗殺事件、覚えてる?
ああ、そっか、やっぱり覚えてるんだ。
忘れられるわけない?
そうかな、きっと世間の人たちはもうとっくに忘れてると思うよ。
でも……そうだよね。
私たちスクールアイドルにとっては忘れられるわけない。
だってあの事件の犯人は元スクールアイドルだった。
そう言われてるんだから。

事件当日は、ドーム全体を貸し切って教団の集会が行われていた。
教団の本部は秋葉原で、すぐそばにあるアキバドームが会場に選ばれたのはごく自然な流れだった。
教祖はとても有名な人だったけど、もう何年もメディアに顔を出してなくて、本当はもう死んじゃってるんじゃないか、なんて言われてた。
正直、彼がまだ生きてると本気で信じてたのは信者くらいじゃないかな。
いや、信者でさえも信じていない人が大半だったかも知れない。
けれど、確かにあの日、教祖はアキバドームで殺された。
言い換えれば、その日までは教祖は生きていたことが証明されたんだよ、皮肉なことに。

当日、ドームの二階席は閉鎖されていて、一般の信者は立ち入れないようになっていた。
犯人はその二階席から、中央のステージで演説中の教祖に向けて矢を放った。
相当訓練された人だったんだろうね。
矢は教祖の脇腹に直撃し、肝臓を貫いた。
血が一気に吹き出して、病院に運ばれたけど間に合わなかった。

事件からまもなく容疑者の名前が挙がって、その名が報道されたとき、世間は驚愕した。
だって、それはかつて秋葉原の地で名を馳せた元スクールアイドルだったから。
信じがたいことだけれど、証拠はいくらでもあったから世間の人はみんな報道を信じるしかなかった。
事件の直前、アキバドームの周辺で多数の目撃証言があったこと。
ドームの裏口からドーム内に入る姿が監視カメラの映像に残っていたこと。
彼女はスクールアイドル時代にアキバドームでライブをしたことがあったので、おそらく会場の構造を知り尽くしていたであろうこと。
彼女は高校卒業後、スクールアイドル時代の同僚の実家がやっていた道場に通いつめ弓道の段位を取ったとされること。
高校卒業後、アイドル事務所に入ってプロのアイドルを目指した彼女だが、その道は険しく、スポンサーになってくれたその教団に多額の借金を背負ってしまったとされること。

事件からひと月くらいの間、都内のあちらこちらで彼女の目撃証言が上がった。
しかし、それだけの目撃証言がありながら彼女は捕まらなかった。
そして、季節が秋から冬へと移り変わる頃、彼女は長野の山奥で、半ば雪に埋もれた状態で発見された。
雪の重みで崩れかけた小屋の中に、ある男と一緒に倒れていたという。
その男は、半世紀ほど前に左翼系武装集団の一員として数々のテロ事件を引き起こし、今日まで指名手配を解けなかったという凶悪犯罪者だった。
はじめから知り合いだったのか、あるいは事件後に知り合って共に逃亡生活を送っていたのかは分からない。
ただ、二人の遺体が発見されたとき、その男こそが事件の裏側で手を引いていたに違いないと考えた人は多いだろうと思う。

元テロリストが教祖殺しを企てて、元スクールアイドルが実行犯となった……。
もしそれが真実だったとしたら、ある意味ではいろんなことが丸く収まる結末だ。
既に死んでいたのではないかと疑われていた教祖が、事件の日まで生きていたことが証明され、
半世紀前から警察が血眼になって探し続けたテロリストの行方が分かって、
その上犯人とテロリストは死んだのだから。

そう、あまりに上手すぎる話なんだよ。
まるで、誰かが筋書きを用意していたみたいに。

この事件には、どこかにカラクリ……はっきり言ってしまえばウソがある。

それじゃあ、順番に行くね。
まずは、確実とはいえないウソから。
それは、殺された教祖の正体。
替え玉だったんじゃないかな。

事件が起きるまで、教祖がまだ生きてるなんて信じてる人はほとんどいなかった。
それだけ、教祖がすでに死んでいた確率は高いということだ。
だとすると、こんな風に考えられる。
教団は、教祖がもうとっくに死んでいることをずっと隠し通してきたけれど、それももう限界で、自ら疑惑に終止符を打つことにした。
そのために教祖の替え玉を用意して、殺人事件のステージに引きずり上げた。
全くあり得ない話というわけでもないと思わない?

次に、もう少し確実なんじゃないかといえるウソ。
それは、犯人とともに遺体で見つかったテロリストの正体。
これまで決して捕まらなかったテロリストがこのタイミングで見つかったなんて、はっきり言って信じる方が難しいくらいの突拍子もない話なわけで。
やはり、このテロリストは替え玉とみて間違いない。

ただ、この二人が替え玉だったとして、その関連性はよく分からない。
教祖の替え玉を用意したのは恐らくその教団だけど、じゃあテロリストの替え玉は?
それも教団が用意したのか?
だとしたら何のために?
もしかしたら何か目的があったのかも知れないけれど、普通に考えれば警察関係者、あるいは国家権力が怪しいってことにはなると思う。

そして、これだけは間違いないと断定できるウソ。
それは、犯人の正体。
元スクールアイドルだった彼女は、犯人に仕立て上げられたんだ。
それこそ、彼女の替え玉まで用意してね。
多分、体形がよく似た人間を捕まえてきて整形でもしたんだろう。
その替え玉は、彼女と本当にそっくりだったから。

犯人に仕立て上げられた彼女は……私は、事件が起きたときアキバドームの周辺なんかにはいなかった。
だって、可愛い妹二人と弟をショッピングに連れて行くところだったんだから。
現場周辺で目撃されたのも、監視カメラに映っていたのも、最後に遺体で発見されたのも、みんな私の替え玉だ。
教祖に向けて矢を放ったのがその替え玉かどうかまでは分からないけれど。

ここまでのことが分かって言えることは、教団と警察は最初から裏で繋がっていただろうってこと。
仮に、私の替え玉を用意したのが教団だったとしても、警察はその替え玉のことを知っていたことになる。
だって、最後にテロリストの、おそらくこれも替え玉と一緒に雪山で見つかったんだから。

そもそも、警察は最初、本気で私を捕まえるつもりだったはずだ。
だけどそれは上手く行かなった。
でも、だからといって『結局捕まえられませんでした』では済まされなかった。
なぜって、私はいろんな場所で目撃されたことになっているから。
これだけ目撃証言があって行方を特定できないなんて飛んだ不手際だ。
そこで、警察は私の替え玉を殺し、雪山で見つけたという体で決着をつけることにした。
ついでに、これだけ長く逃げられたのは左翼系武装集団の人間の力を借りたからだ、というシナリオまで用意した。
おかげで、半世紀もの間ずっと逃げ回り続けたテロリストを発見するという功績まで世間にアピールすることができた。
まさに一石二鳥、だったんだ。

……逃げ惑う日々は、本当に辛かった。
事件の翌日、テレビを点けたら私の顔が映ってて。
でも、それは私が夢見た華々しいステージの映像とはまるで違っていた。

犯人に仕立て上げられたのがどうして私だったのか。
それは今でも分からない。
私が決して知り得ない深い理由があるのか、
たまたま都合の良い条件がそろっていたから選ばれたのか、
それとも本当にランダムにくじで決まったことなのか。

でも、理由なんて結局は関係ない。
犯人にされてしまった以上、捕まらないように逃げるしかない。
それだけだった。

「逃げなさい」
一緒にスクールアイドルをやった仲間で、病院の娘だったその子は私に大金を渡してそう言った。
仲間たちだけは、私のことを信じてくれた。
「あなた、オズワルドにされたのね。今ならまだ間に合うわ。私とロシアに」
「いや、逃げるなら南の方角やね。カードがそう告げとるんや」
「いつかまた、……おいしいご飯を一緒に食べようね……っ」
「私が……、私があなたに弓を教えたばっかりに……」
「必ず帰ってくるにゃ、……との約束」
「ダメだね……、仲間一人救えないなんて、私、今まで何やってきたのかな。こんなんじゃリーダー失格だよ……っ」
「いやだよ……っ、こんな……、なにも悪いことなんてしてないのに、なんでさよならなんて……っ」
最後に、みんなとそんな話をした。

逃げ惑う日々を経て、私は別人になるしかないと気づいた。
名前を捨てて。
髪を染めて。
しゃべり方も変えて。
でも、私にはどうしても捨てられないものがあった。
一つは顔。
顔まで変えてしまったら、本当に私が私じゃなくなる気がして、そんなことを言ってる場合なんかじゃないのに、諦めきれなかった。
そして、もう一つはアイドルへの夢。
正確には、皆を笑顔にしたいっていう夢かな。
ほら、私、いつも言っているでしょ?

みんなを「にっこりん」にしたいって。

 ***

かすみ「……にっこにっこにー」

瑠奈「ね、似てるでしょ?」

かすみ「じゃあ、りな子は……」

瑠奈「どうする?この話、ライブに来てくれたみんなに教えちゃう?」

かすみ「そ……そりゃあ、教えたいのは山々だけど?でも、ちょーっとネタとしてビッグ過ぎるから、簡単に教えちゃうのはもったいないかなぁ?」

かすみ「こんなものすーっごいネタなら、本当にいざとなったときの切り札として取っておかなくちゃね!」

瑠奈「ありがと。かすみちゃんは優しいね」

かすみ「勘違いしてもらっちゃ困るなぁ。秘密になんてしてあげないよ。いつ私がこのネタを解禁するか分からないんだからねっ!」

瑠奈「分かった。震えて待ってる」

かすみ「それがよろしい!」

 ***

花丸「っていう話を考えてみたずら」

善子「なによ、これ」

花丸「最近読んだ『ゴールデンスランバー』っていう小説に触発されて書いてみたずら!」キラキラ

善子「ふっ、さしずめ、“真犯人は堕天使ヨハネ”ってところね」

花丸「そんな設定はないずら」ジト目

おわり

ついに虹ヶ咲学園のデビューアルバムが発売されたということで、
「いよいよ虹ヶ咲の時代が来た!これはSSを書くしかない!」
ということになりました。

本文にもありますが、アイデアは伊坂幸太郎先生の大作「ゴールデンスランバー」を読んで着想したものになっています。
パロディと言うには伊坂先生に申し訳ないのですが、本SSをきっかけに「ゴールデンスランバー」にも興味を持っていただけたらと思います。

相変わらず筆が遅くてどうしようもないのですが、気持ちとしては虹ヶ咲でいろいろ書いていけたらなー(次はクリスマスかな。上げられれば良いのですが……)というところです。

それでは、また。

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