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歩くんですの箱 SS置き場

躍動感を表現するにはどうすればいいんだろう……と日々考え中。

【ラブライブSS】5年前のできごと (Part08)

Part08 (Part07の続きです)
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穂乃果「着いたよ。小さいアパートだけど、上がっていって?」

こころ「穂乃果さんは、大学生の時から、ずっとここに住んでたんですよね?」

穂乃果「うん。もう少しお金が貯まったら出ていくつもりなんだけどね。さすがに狭すぎるもん」

ここあ「一人暮らしかー、憧れるなぁ」

穂乃果「そう?実際やってみると、面倒なことも多いよ。家事とかぜんぶやらなきゃいけないしね。……この部屋だよ」

ガチャ

こころ/ここあ「おじゃましまーす」

穂乃果「何にもない部屋だけど、くつろいで行って」

こころ「ここが……穂乃果さんのお部屋なんですか?」

穂乃果「うん、面白いものなんて何も無いでしょ?あ、今お茶出すから待ってて」

こころ「ありがとうございます」

ここあ「それにしても、本当に何もない部屋だなぁ」

穂乃果「それで、ここあちゃんが探してるものは見つかった?」

ここあ「いいや」

穂乃果「だろうね。一体何を探してるか知らないけど、私の部屋にはホントに何もないの。満足した?」

ここあ「まさか。こんなに何もない部屋に暮らしてるなんて、一体何の冗談だよ」

穂乃果「自分でも殺風景だなーっては思うんだけどね」

ここあ「ごまかしたって無駄だよ。家具の一つもない部屋に住んでるって言われて信じる人なんて、よっぽどのお人好しくらいだ」

穂乃果「うーん……。残念だけど、ここに住んでるのはホントだよ。調べたなら分かるでしょ?私の家の住所はここなの」

ここあ「確かに、あたしが調べた住所はこの家の住所だね。学生時代にここに住んでたってのは本当なんだろうな」

穂乃果「だから、今でもここに住んでるんだって。何もない部屋でも、案外普通に生活できるもんだよ」

ここあ「はぁ……この期に及んで一体何を隠すつもり?賃貸契約は継続してるとしても、普段生活している家が別にあるってことはバレバレだってのに」

穂乃果「じゃあ、仮に私がここじゃない、別のところに住んでるんだとして、どうするつもり?キミ達はその場所を知らないんだから、私が否定すればもうどうしようもないよね?」

ここあ「簡単のことだね。あんたに連れて行ってもらえばいいだけだ」

穂乃果「はははっ、それ本気で言ってるの?」

ここあ「さあ、どうかな?その前に、まだあんたに確認しておかなきゃいけないことがある」

穂乃果「一体なに?」

ここあ「あんたがことりを殺した理由はなんだ?」

穂乃果「さっきここあちゃんが言ってた通りだよ。あいつが雪穂を殺した犯人だから、その敵を討った」

ここあ「じゃあ、どうしてあんたは、ことりが雪穂を殺した犯人だと知ってたんだ?」

穂乃果「それは、あいつが雪穂を殺すところを見たから……あれ?違う……」

ここあ「そうだ、あんたはずっと、ことりが雪穂を殺すところを見たと思い込んでたが、それは違った。じゃあ、どうしてことりが雪穂を殺したと分かったんだ?」

穂乃果「電話……。そう、電話だよ」

こころ「雪穂さんが亡くなる直前に掛かってきた電話のことですか?」

穂乃果「うん。雪穂が死んだ時、直前に雪穂の携帯から電話が掛かってきた。でも、電話に出てもガシャンって何かが落ちる音とか、そういう激しい音しか聞こえなくて、これはただ事じゃないんだって思った……そしてその後、雪穂が死んだことを知った」

穂乃果「警察は自殺だって言った。だから、私も最初は雪穂は自殺なんだと思ってた。でもね、そうじゃないってことが分かっちゃったんだよ」

こころ「一体、何があったのですか?」

穂乃果「雪穂の葬儀が終わった次の日だったかな。見つけたんだよ。『南ことりが雪穂の携帯を持っているのを』」

こころ「そんなっ、でも海未さんは……」

ここあ「なるほどね。あの夏、ことりは海外から一時帰国していて、その間あんたの実家に泊まっていた。なにかの拍子に、ことりが雪穂の携帯を持ってるのを見つけちゃったわけだ」

穂乃果「どうして雪穂の携帯を持ってるのかを聞いても、あいつは『分からない』って言うだけでちゃんと答えてくれなかった」

穂乃果「考えてもみてよ。雪穂が死ぬ直前に携帯から電話をして来た。しかし雪穂が死んだ現場からは雪穂の携帯は見つからなかった。そしてその携帯をあいつが……南ことりが持っていた」

穂乃果「これが全部偶然だと思う?」

ここあ「あんたの話はよく分かったよ。あんたも海未も単純なんだな。雪穂の携帯を持ってたってだけでその人が雪穂を殺したと思い込むなんて」

穂乃果「待って、海未ちゃんも雪穂の携帯を見たの?」

ここあ「ああ、その通りだよ」

穂乃果「じゃあ……」

こころ「実は、そこまで単純じゃないんです。なぜなら、海未さんは『ことりさんじゃなくて私達のお姉さま、矢澤にこ』が雪穂さんの携帯を持っているのを見たと言ってるのですから」

穂乃果「どういうこと?それは、いつの話なの……?」

こころ「雪穂さんの葬儀だそうです」

穂乃果「待って。海未ちゃんは雪穂の携帯がどんなものか知らないんじゃないかな?」

ここあ「実際に見たときは分からなかったらしいね。でも、その後亜里沙と話す機会があって、その時に海未が見た『ゲロカエルんストラップのついた携帯』が雪穂のものだということを知ったんだ」

穂乃果「そんな……じゃあ、雪穂の葬儀の時には雪穂の携帯はにこちゃんが持ってたってことなの?そして、南ことりがその携帯を持っていたのは雪穂の葬儀があった次の日……」

ここあ「このことが一体何を意味しているかまでは分からない。ただ、少なくとも現実はあんたが考えるほど単純じゃない。携帯電話だけで相手を犯人だと決めつけるのは早計だったってことだよ」

穂乃果「でも、海未ちゃんの勘違いかも知れないよ。それだけのことで南ことりがシロだって決めつけるのは、それこそ早計じゃない?」

ここあ「さあな。そこまでのことは分からない。だが、もし海未が言ったことが事実だとしたらどうだ?事件の全貌は、あんたが思ってたより遥かに複雑だったってことになる。ともすれば、あんたはとんでもない過ちを犯したことになるんじゃないのか?」

穂乃果「そんなの今更じゃない。人ひとり殺したんだよ」

ここあ「ことりが雪穂殺害の犯人で、あんたは敵を討つためにことりを殺した。これなら、ことりはあんたに殺されたとしても文句は言えない立場だ。だが、ことりが犯人でないとしたらどうだ?あんたは何の罪もない人間を勝手な思い込みだけで殺したことになる。しかも、ずっとあんたのことを信頼し続けていた幼馴染を」

穂乃果「そんな……そんなはずない……」

ここあ「あんた、言ったよな。ことりは笑っていたって。彼女は、あんたに殺される瞬間ですら笑顔を見せたんだ。あんたにはその意味が分かるか!?」

ここあ「――全部あんたのためだ。あんたに殺されることであんたが前向きになってくれるなら、そのために死ぬのも本望だったんだよ!あんたは、その思いを……幼馴染が命を懸けてまで捧げた祈りを受け取ったのか!?」

穂乃果「そんな、ことりちゃん……、あ……あ…………」

ここあ「いい加減自覚するんだ!あんたがやった酷いことは、決して終わったわけじゃない。5年前から今に至るまで、あんたはずっとことりの思いを裏切り続けてきた。本当はあんただって分かってるんだろ?」

穂乃果「……分からないよ、分かる訳なんか……分かりたくなんかない!」

ここあ「だとしたら、それがあんたが犯した罪に対する償いだ。もういいだろう、そろそろ潮時じゃないのか?」

穂乃果「……そうだね、分かった。このまま私が家に帰ったら、きっと私は壊れてしまう。それでも、やらなきゃいけないことなんだだね」

ここあ「ああ。だから、ウチらを案内してくれ。あんたの家まで」

 ***

ここあ(あまりに強引な理屈だ。でも、これくらいしか穂乃果を説得する方法なんてなかった)

ここあ(実のところ、ことりが死ぬ時何を思っていたかなんて分かるはずもない。死人に口なしとはよく言ったものだ)

ここあ(でも、あたしがそれらしく組み上げて見せた言葉一つで穂乃果はこうして現実と向き合おうとしている)

ここあ(何かがざわめいているような、心の中を冷たい風が通り過ぎるような感覚を覚えた)

 ***

16

【穂乃果・アパート】

こころ「……着いたんですね」

穂乃果「うん……このアパートが、私が普段暮らしている家だよ」

こころ「案内、お願いします」

穂乃果「この部屋だよ」

ガチャ

穂乃果「ただいまー」

雪穂「おかえりお姉ちゃん。あれ、誰かいるの?珍しいね、お姉ちゃんがお客さん連れてくるなんてって……え?」

こころ「おじゃましま……す……って、あ……っ」

ここあ「……やっぱりね」ボソッ

ここあ「久しぶり。迎えに来たよ、『姉ちゃん』」

雪穂「お姉ちゃん、これは……?」

穂乃果「そん……な……、にこ……ちゃん……?」

雪穂「そう……気づいてしまったのね」

穂乃果「なんで……なんでっ……」

にこ「こころ、ここあ、大きくなったわね。また会えてよかった……」

こころ「お姉さまあああああっ」ギュー

にこ「よしよし、寂しい思いをさせたわね」

こころ「ひっく……無事で良かったですっ」

ここあ「こんなところにいたんだな、本気で心配したよ。いつまでも帰ってこないで……、外泊するなら連絡くらいくれよ……」

にこ「ごめん……本当にごめんね。悪いお姉ちゃんで」

穂乃果「あ……うわああああああああああっ」

こころ「……穂乃果さん?」

穂乃果「そんなっ……雪穂は、雪穂は……ああああああああ」

にこ「お姉ちゃ……穂乃果!しっかりしなさい!」

穂乃果「うわああああああああああ」

にこ「そうよ。雪穂は、5年前の夏に……。決して、戻っては来ないのよ」

穂乃果「どうして?どうして?死んじゃった、死んじゃった!あああああああああっ」

にこ「……ダメね、落ち着くまで待つしかないわ」

ここあ「姉ちゃんも、今のうちに心の準備しといてね。聞きたいことが沢山あるんだ」

 ***

にこ「穂乃果、寝ちゃったわね」

こころ「泣き疲れてしまったんでしょうか」

ここあ「姉ちゃん、そろそろ話を始めようか」

にこ「ええ、分かったわ」

ここあ「まず、姉ちゃんはどうしてこの家で『雪穂』として生活していたんだ?」

にこ「そうね……順番に話すわ。当時プロのアイドルを目指していた私は、地方営業でこの近辺まで来ていたのよ。それでいつも通り仕事をしたんだけど、結果はいつも通り散々だった。適当にあしらわれて、生暖かい目で見られ、失笑を買って終わり。μ’sでラブライブに優勝したのが嘘のような相手にされなさよ」

にこ「仕事が終わった後、飲みにでも行こうかと思って駅前まで戻ろうとしたところで、ふと思い出した。そういえば、穂乃果が下宿してるのはこの近くだったなーって」

にこ「それで、行ってみようって思ったのよ。私が穂乃果の家に行った理由はそんな単純なことだった」

にこ「でもその時、おそらく雪穂の自殺がショックだったからでしょうね、おそらく穂乃果は完全におかしくなっていた。訪ねてきた私を見て、なぜか雪穂だと思い込んでしまったのよ。あの時は怖かったわ。私を見て雪穂、雪穂って連呼して、私が否定しようとしてもすごい剣幕で『どうして他人のフリしようとするの』って迫られて、携帯とかも全部取り上げられた挙句家に軟禁された」

にこ「数日頑張ってみたけど私は家から出られなかったし、穂乃果は私のことを雪穂だと完全に思い込んじゃってるしで、これはもうどうしようもないって思ったわ。諦めて雪穂に成りきるしかないってね」

にこ「その後、穂乃果はすぐ家を引っ越すと言い出した。それで今の家に引っ越して来たわけだけど、その理由が雪穂を殺そうとした犯人がまた狙ってくるかも知れないから、ってことだった」

にこ「穂乃果は寝ているときよく魘されるのよ。だから、夜中に起こされることが多くて大変だったわ」

ここあ「穂乃果が魘されてた夢ってのは、ことりを殺した時の夢だな」

にこ「え?ちょっと待って。私はそんな風に聞いてないわよ」

こころ「穂乃果さん自身が勘違いしていたんです。あの夢は……本当はことりさんが雪穂さんを殺す夢ではありません」

にこ「どういうことよ」

ここあ「本人に聞いてしっかり確かめたよ。あれは、穂乃果がことりを殺したときの記憶を夢に見てるんだ」

にこ「待って。それって……え、まさか……」

ここあ「そう、ことりを殺したのは穂乃果だ」

にこ「そんな……なんでなの?」

ここあ「ことりが雪穂を殺した犯人だと思ったからだ」

にこ「ああ、そっか……そういうことだったのね。私、なんてことを……」

こころ「お姉さま……なにか、心当たりがあるのですか?」

にこ「落ち着いて聞いて。まず、雪穂を殺したのは私ではないわ。そもそも、雪穂が死んだ原因は警察の言う通り自殺のはずよ」

ここあ「それはそうだろうね。自殺と他殺の区別もつかないほど警察は節穴じゃない」

にこ「ただ、雪穂が死んでいるのを一番最初に見つけたのはおそらく私よ」

こころ「そうだったんですか!?」

にこ「その時、私は買い物に行く途中だった。行く途中にボロボロの家があってね、まあ廃墟なんだけど、その庭の裏手を回ると近道なのよ」

こころ「お姉さまと買い物に行くときはよく通る場所ですね」

にこ「その日も、私はその道を使うことにした。そうしたら見つけてしまったのよ。崩れかけた縁側に横たわった死体を」

ここあ「それが雪穂だったのか」

にこ「そうね。脇腹に包丁が刺さってて、そこから大量の血が出て縁側や庭の土を赤黒く染めててね。最初は自分が見ているものが何なのかすら分からなかった」

にこ「それが雪穂の死体だって分かった時は頭が真っ白になって、どうしていいか分からなくなって……その時にね、見つけたのよ。足元に携帯電話が落ちているのを」

にこ「それが、まるで拾ってくださいと言わんばかりの位置にあったもんだから、私は思わずそれを拾い上げてしまった。手足がひょろひょろした変なカエルのストラップがついてたのがやけに気になったわね」

こころ「ゲロカエルんですね」

にこ「私は、とにかく警察に電話しなくちゃいけないと思った。でも混乱してて、訳が分からなくなって、とにかく拾った携帯を弄ってたら穂乃果に掛かっちゃって……それでまた混乱して電話を落として、慌てて拾おうとして転んだりしてね」

にこ「結局何とか携帯を拾い上げたんだけど、その時には電話は切れちゃっててね。そこで、ふと思ったのよ」

にこ「今この瞬間を誰かに見られたらどうなるんだろうって」

にこ「それで、私は慌ててその場から逃げて、警察にも連絡せずに家まで帰ってきちゃったのよ。卑怯よね、結局自分の身が可愛かっただけなんだから」

にこ「その後、自分が雪穂の携帯を持って帰ってきてしまったことに気付いた。まずいと思ったわ。もしそれが警察に見つかったら事件との関与を疑われてしまう」

こころ「結局、その携帯はどうしたんですか?」

にこ「数日後、雪穂の葬儀があったでしょ。その時にたまたま置いてあったカバンに滑り込ませたのよ。そしたらそれがことりのカバンだった」

ここあ「警察の捜査の矛先を他人に押し付けようとしたってことか」

にこ「ええ。今思えば、なんて恐ろしいことをしたのかしらね……。でも、あの時の私はまともな判断力を失ってた」

こころ「なるほど……そういうことだったんですね」

にこ「ええ、反省してもしきれないわ」

ここあ「姉ちゃん」

にこ「ここあ?」

ここあ「ウチらにだけは本当のことを言ってよ。あたし達は姉妹なんだ。姉ちゃんが雪穂の携帯から穂乃果に電話したのも、雪穂の携帯を持ち去ったのも、それをことりのカバンに滑り込ませたのも、偶然なんかじゃない。全部、姉ちゃんが意図してやったことだったはずだ」

にこ「ここあ……」

ここあ「間違って雪穂の携帯を持ち去ってしまって、まずいと思ったなら、神田川にでも投げ捨てればよかった。なのに、わざわざ関係者しかいない葬儀参加者のカバンに携帯を入れたのはどうして?」

にこ「そう……ここあは、とっても勘のいい女の子になったのね。昔はただのやんちゃ娘だったのに」

こころ「お姉さま……」

にこ「ごめんね……でもどうしても知られたくないの。特にあなた達にだけは」

ここあ「そっか。姉ちゃんは変わってないな。あの時だって――」

「姉ちゃんがもう少しウチらのことを頼ってくれていたら、こんな結末にならずに済んだかも知れないのに」

Part09へ続く

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