忍者ブログ

歩くんですの箱 SS置き場

躍動感を表現するにはどうすればいいんだろう……と日々考え中。

【ラブライブSS】5年前のできごと (Part05)

Part05 (Part04の続きです)


【穂乃果・アパート】

雪穂「ねえフラン」

雪穂「なんだね」

雪穂「私たちは、これからどこへ向かうのでしょうね?」

雪穂「ゴーギャンの絵にそんなタイトルの作品があったような気がするが?」

雪穂「真面目な話よ。例えば、もし穂乃果が真実に気付いてしまったら?」

雪穂「君にとっては、むしろ良いことなんじゃないか?君は以前言っていただろう。自由になりたいと」

雪穂「そうね。だけど、ふと思ったのよ。自由になったところで、私は何をしたらいいんだろうってね」

雪穂「はははっ、君も飼われ癖がついてきたじゃないか」

雪穂「ぐぬぬ、あんたに言われるとなんかムカつくわ。ともかく、身の振り方は考えなきゃいけないと思うのよ。なんとなくだけど、思うのよね。今の生活が終わる日も近いんだって」

雪穂「だったとして、僕に出来るアドバイスなんかあると思うかい?僕はずっとどこかに繋がれて生きてきた。そういう生き方しか出来ない存在なんだから」

雪穂「儚いわね、あんたの生き様って」

雪穂「ああ、そうさ。でもね、僕はそれなりに満足しているよ」

雪穂「それは、儚くも力強く生きることが出来たから?」


 ~~~回想~~~

雪穂(小さい頃、近所のおじいさんが犬を飼っていた)

雪穂(とっても大人しい犬で、名前をフランと言った)

雪穂「あっ、フランだ。こんにちは~」

おじいさん「おお、今日も来てくれたのかい」

雪穂「うん。だってフランかわいいんだもん」

おじいさん「あはは、君に可愛がってもらえて、きっとフランも喜んでるよ」

雪穂「わたしも、フランのことだーいすき」

おじいさん「あはは、この子も年だからね、犬の成長なんてあっという間だ。でもね、短い一生の中のうちにこんなに色んな人に愛されてきたんだから、フランは幸せ者だ」

雪穂「そっか~、よかったね、フラン」

おじいさん「フランはね、フランシウムからとった名前なんだよ」

雪穂「ふらん、しうむ?」

雪穂(そして、おじいさんはフランの名前の由来を説明してくれた。だけど、小さかった私にはその説明は難しくてよく分からなかった)

雪穂(むしろ、その意味が分かるようになったのはごく最近のことなのだ)

雪穂(暇だった私は、穂乃果の本棚にあった本の一冊をたまたま眺めていた)

雪穂(あれは大学の教科書なのかも知れないけど、なんであんな本を穂乃果が持っていたのかは分からない)

雪穂(少なくとも、他の本に比べると圧倒的にきれいで、ほとんど読まれた形跡はなかった)

雪穂(とにかく、私はその本の中でフランシウムに関する記述を見つけた)

・フランシウム……元素記号87の典型元素で、アルカリ元素としては最も原子番号が大きい。元素記号はFr。自然元素としては最後に発見された元素である。安定同位体は存在せず、すべての同位体が高度な放射能を有する。半減期が最も長い質量数223の同位体でもその半減期は22分と短い。自然に存在する元素としては最も不安定であり、その化学的、物理的性質はよく分かっていない。

雪穂(読んでもよく分からなかった。でも、フランに関わることだったから、内容に興味はあった。それに、この家から出ることが出来ない私は、とにかく暇だった)

雪穂(だから、私は辞書を使っていろいろ言葉を調べた。そうするうち、あの日おじいさんが何を言っていたのかが、心の中で結びついていった)

雪穂(おじいさんは、確かこんなことを言っていたのだ)

おじいさん「フランシウムってのはね、この地球の中で最も儚い物質なんだ。生まれたはほんの数十分で消えてしまう、そんなもんじゃ」

雪穂「はかない?」

おじいさん「すぐに無くなってしまうってことだよ」

雪穂「なくなっちゃうの?なんか悲しい」

おじいさん「でもその代わり、生まれてから無くなるまでのごく短い時間にとってもたくさんのエネルギーを出すんだ」

雪穂「どーん!って?」

おじいさん「あはは、そんな派手ではないけどね」

おじいさん「犬が生きられるのは、せいぜい十数年程度のものだ。そんな短い命だけど、その間だけでも元気に力強く生きてほしい。だからわしはこの犬にフランシウムと名付けた」

雪穂「ふーん?」

おじいさん「ちょっと難しかったかな。まあそのうち君も分かるようになるよ」

雪穂「よくわかんないけど、がんばる!」

おじいさん「うん、たくさんたくさん頑張るといい。人間は犬と比べたら何倍も長く生きられるけれど、それでも人生なんてあっという間だよ」

雪穂「わたしは、すっごい長生きするよ。もう、すっごーいの」

おじいさん「あはは。そうだね、君にはたくさん時間がある」

雪穂「おじいさんだって、もっと、もーっと、長生きするんだよ」

おじいさん「そうだったらいいな。でもね、もし長生き出来るんだとしても、生きている一瞬一瞬の時間を大切にするのはとっても大事なことだ」

おじいさん「君にもね、いつも一生懸命に、力強く生きてほしいんじゃよ」

 ~~~~~~~~

雪穂「だから、私は、ここに来るまではずっと懸命に生きてきたわ」

雪穂「そうだね、君は、ずっと一生懸命だった。だが、その結果はどうだ?」

雪穂「ええ、あなたの言う通りよ、フラン。結局、最後は失敗に終わってしまった。それでも、ほんの一時期だけは希望のある夢を見ることが出来たけど」

雪穂「また一生懸命になれば、もう一度夢を見ることが出来るかもしれないよ」

雪穂「それは出来ないわ。だって、私がなぜ『雪穂』なのかを辿っていくうちに、気づいてしまったのよ」

「全力で生きて、一生懸命考えて、その果てに行きついた絶望が『彼女』を殺してしまったんだって」

 ***

10

【希・自宅】

ここあ「許せないよあの女!ウチらの姉ちゃんを人殺し扱いして!」

こころ「正直、ショックでした。あの海未さんが、あのような考え方をお持ちなんて……」

希「ごめんな、やっぱり二人を海未ちゃんに会わせるべきやなかった」

ここあ「希は悪くないよ。むしろ話を聞きに行ったのは正解だったね。あんなことを考えるような輩がいるってことが分かったんだから」

こころ「ですが、お姉さまが雪穂さんの携帯を持っていたというのはどういうことなんでしょう?」

ここあ「さあ?誰かが姉ちゃんを嵌めようとしたのかもね。そもそもあの女が事実を言ってる保証なんて無いけどな」

ここあ「ともすれば海未が雪穂を殺して、それを姉ちゃんに擦り付けようとしたのかも」

こころ「ここあ、口が過ぎるわよ」

希「一旦落ち着いて考えてみよか。これまで凛ちゃんと海未ちゃんの二人の話を聞いてきた。二人から聞いた話を一回整理してみた方がええんやない?」

ここあ「まあ、海未の話は論外だったけどね」

希「それも含めて、一回整理して考えてみよ?どうして海未ちゃんがあのように考えたのかも重要なファクターやし」

ここあ「希は、姉ちゃんが雪穂を殺した可能性が捨てきれないっていうのかよ」

希「そういうつもりやない。せやけど、手元にある手がかりをきちんと見つめ直して見んと、分からないこともあるんやないかな」

こころ「希お姉さまのおっしゃる通りだと思います。ここあ、一回頭を冷やすべきよ」

ここあ「……そうだな、さっきはちょっと熱くなりすぎたよ」

希「まずは凛ちゃんやね。彼女はどうやらことりちゃんが死んだことと、それに対して穂乃果ちゃんがどう考えているかを気にしとった」

こころ「妹の雪穂さんが死んだ矢先のことりさんの不幸でしたから、実はことりさんの死をあまり悲しんでいないんじゃないか、と心の中で疑っていたように見えましたね」

ここあ「表面だけ見ればそうだけど、あれはきっともっと何かあるよ。凛は、ことりが死んじゃう二日前に穂乃果に会ったと言ってたけど、その時のことをあまり話そうとしなかった。そこがどうも怪しいね」

こころ「ことりさんは、海外で働いていますから、もし日本に帰っていなければ殺されることも無かったかも知れないんですよね」

希「そうやね。そして、ことりちゃんは日本にいる間穂乃果ちゃんの家に泊まっていた。事と次第によっては二人の関係に何かあったんじゃないかって疑うのも無理はない」

ここあ「凛が最も恐れてるのは、きっとこういう状況だろうね。もしや、ことりが死んだことを穂乃果はむしろ喜んでるんじゃないか。それどころか、ことりを殺した犯人こそが実は……」

こころ「でも、そんな可能性を考えたくはない。だからこそ凛さんは穂乃果さんを信じている、と言ったんだと思います」

希「ことりちゃんが殺された状況については新しい情報はなかったけれど、一応おさらいしておくと、脇腹を刃物で何度も刺されたってことやね。そして凶器の刃物は付近の路上のごみ捨て場に捨てられていた」

こころ「警察の捜査によると、凶器からは指紋は出てこなかったそうですね。ふき取ったか、手袋をして犯行に及んだということでしょうか」

希「凛ちゃんから聞いた話についてはこのくらいかな?問題は海未ちゃんから聞いた話の方やけど……」

ここあ「ダメだ、思い出すと腹が煮えくり返りそうになるわ。しゃべると悪口しか出てこなさそうだから、あたしはしばらく黙ってるよ」

こころ「海未さんは、ことりさんの葬儀に出たときにお姉さまが雪穂さんの携帯電話と思われるものを持っているのを見たということですね」

希「雪穂ちゃんが死ぬ直前、穂乃果ちゃんは雪穂ちゃんの携帯から電話をもらってる。その電話からは衝撃音や雑音が聞こえた」

こころ「この二点を照らし合わせて、雪穂さんは実は自殺ではなく、事件に巻き込まれて助けを求めようと姉の穂乃果さんに雪穂さん自身の携帯から電話を掛けた。その携帯は犯人によって持ち去られた。その携帯を持っているお姉さまこそ雪穂さんを殺した犯人である。と結論付けたわけです」

希「それに加え、にこっちは現在行方不明になっとる。殺人犯だから警察に見つからんよう逃げ回ってるって考えてるみたいやね」

こころ「ちょっと考えれば、その理屈はおかしいってことが分かると思うのに。警察は雪穂さんの死を自殺と結論付けているんですから、逃げる理由なんてありません」

希「海未ちゃんは、ショックが大きすぎて冷静に物を考えられなくなってるんやろね」

こころ「問題は、雪穂さんが死んだ原因がもしかしたら自殺ではないかも知れないということです」

希「警察が自殺と結論付けたからね、ウチも今までは雪穂ちゃんは自殺だったんやって思ってたんやけど」

こころ「私もそうでした。ですが、海未さんは他殺だと思っています。一方、凛さんは自殺説を支持していると思います」

希「気になるのは穂乃果ちゃんやね」

こころ「私は、凛さんと別れる直前にこんな質問をしました。”穂乃果さんは、雪穂さんの死が本当に自殺だったと思っているでしょうか?”」

こころ「凛さんは何も答えてはくれませんでした。ですが……」

希「それだけで十分なヒントやった。ことりちゃんが亡くなる2日前に凛ちゃんと穂乃果ちゃんが会った時、凛ちゃんは一体何を知ったのか」

こころ「凛さんが穂乃果さんから聞いた話はきっとこんな内容なんだと思います。『雪穂さんは誰かに殺されたんだ』」

希「凛ちゃんの話からすると、穂乃果ちゃんがそう思ってるのは間違いなさそうやね」

こころ「ですが、海未さんの話とは矛盾します。海未さんは、穂乃果さんが『雪穂は、最期の瞬間に自分が今まさに命を絶とうとしているのだと姉である私に知らせようとしたんだ』と言っているのを聞いたと言っていました」

希「どちらかの話がウソという可能性もあるけど」

こころ「まず凛さんですが、さすがにウソを吐いているとは考えにくいのではないでしょうか。わざとあそこまで思わせぶりな振る舞いが出来るなら相当な演技力だと思います」

希「そうやね。なら、海未ちゃんはどうやろ?」

こころ「こちらの話もウソとは考えにくいです。海未さん自身は雪穂さんが誰かに殺されたと考えています。ウソを吐くなら穂乃果さんも同じように考えていたという話をすると思います」

希「どちらの話もウソでないんやとすれば、どちらかが思い違いをしている、ということになるんかな?」

こころ「そうかも知れません。でも、二つの説を同時に成り立たせる仮説を立てることもできます」

希「聞かせてもらってええかな?」

こころ「単純なことです。穂乃果さんは雪穂さんが亡くなった直後は警察の現場検証の話を信じて雪穂さんは自殺なんだと思っていた。けれど、その後何かがあってその意見を変えたんです」

希「だとすると、海未ちゃんと同じようなことなんやろか?にこっちが雪穂ちゃんの携帯を持っているのを見た、とか」

こころ「もしかしたらそうかも知れません。そして、穂乃果さんは海未と同じように『雪穂を殺したのはお姉さまだ』と考えた」

希「となると、にこっちが行方不明になった事件に、穂乃果ちゃんが関与している?」

こころ「今の段階では、何とも言えませんけど。ぜひ、穂乃果さん本人からお話を聞きたいです」

希「でも、もし穂乃果ちゃんがにこっちを雪穂殺しの犯人だと思ってるなら、海未ちゃんと同じや。会ってくれるかどうかも分からへんよ」

こころ「それでも、何とか会わせてもらえるようにお願いしてみます」

Part06へ続く

拍手[0回]

PR