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歩くんですの箱 SS置き場

躍動感を表現するにはどうすればいいんだろう……と日々考え中。

【ハルヒ×きんモザSS】アリス「シノが金髪への興味を無くしちゃった」Part 07

Part07 (Part06の続きです)

【10.帰ってきた、あのすばらしき日常】

- ??? -

シャリシャリ。

キョン(んん?ここは……)

古泉「おや、お目覚めですか。お早うございます、といっても夕方ですが」

キョン「なんだ、古泉か」

古泉「なんだ、とはご挨拶ですね。もう少し友好的な態度をお示しいただけると僕としても嬉しいのですが」

キョン「いや……そういえば前にも似たようなことがあったなと思ってな」

古泉「ええ、以前にもこの病院であなたのお目覚めに立ち会いました。あ、リンゴ食べますか」

キョン「もらおう」

古泉「ウサギの形に切ってみました。どうです?上手いでしょう?」

キョン「お前がやったと思うとなんだか複雑だな」

古泉「そうですか、残念です」

キョン「それで、俺はどうなったんだ?うっ、痛たたっ」

古泉「佐々木さんの剣で肩の付け根をやられてから、失血のショック症状で一時的に気を失っていたのですよ。鶴屋さんに病院まで送り届けていただきました」

キョン「そうだったのか……。後で礼を言っておかないとな。それで、お前はどうだったんだ?」

古泉「長門さんと一緒だったので辛うじて怪我はせずに済みましたよ。普段の長門ならもっと強いんでしょうが、閉鎖空間内では統合思念体との通信が途絶えるようで、かなり戦闘力が下がっていました。橘さんは戦闘慣れしていないと思っていましたが、なかなか手強い相手でしたね」

キョン「もしかして、ここは佐々木の閉鎖空間の中なのか?」

古泉「いえ、朝比奈さんと国木田さんが上手くやってくれたようで、佐々木さんの閉鎖空間の膨張は止まりました。今はもう元の状態に戻っています。涼宮さんの能力もそのままですよ」

キョン「国木田?」

古泉「無関係な一般人を巻き込むのは望ましくはないのですが、僕も長門さんも橘さんの相手で手一杯でしたからね。朝比奈さんしか動ける人がいなかったのですが、渡橋さん、いや、涼宮さんと言うべきでしょうか……が、ちょうどその場に現れた国木田さんを連れて行くようにおっしゃったので、そのアドバイスに従いました」

キョン「そうだったのか。あー、にしてもいろいろと分からないことだらけで頭がこんがらがりそうだぜ」

古泉「一つ一つご説明しますよ。まず、佐々木さんの閉鎖空間が膨張した原因は大宮さんでした。これは僕の予想した通りです。正確には大宮さんと佐々木さんの合意に基づくものなんでしょうが」

キョン「彼女が?何でまた」

古泉「さきほど朝比奈さんから伺ったんですがね。大宮さんは、高校卒業後のことで不安になっていたんですよ。とりわけ、アリスさんと離れ離れになったらどうしようという思いが強かったようです」

キョン「様子がおかしいってのはそのせいだったのか」

古泉「そして、悩んでいるタイミングに重なって超能力の発現が起きた。ここからは僕の推測になります。ただでさえ心に負荷を抱えている状況で超能力という脳機能に大きな変化を与える出来事が起きたため、大宮さんはいわば多重人格状態に陥りました」

キョン「多重人格?現実にそんなことがあるんだな……」

古泉「超能力を発現したばかりの人間にはしばしば見られる現象です。決して珍しいものではありませんよ」

キョン「確かに、言われてみると様子がおかしい時があった気がするな」

古泉「大宮さんは、普段の人格―これを第一の人格と呼ぶことにしましょう―の他に二つの人格を発現したと思われます。第二の人格はアリスさんのことをすべて忘れようとする人格、そして第三の人格が佐々木さんの閉鎖空間を利用して永遠に変わることのない世界を実現しようとする人格です」

キョン「あー、もう何が何だか分からん。佐々木の閉鎖空間を使って永遠の世界を作るってのはどういうことだ?」

古泉「佐々木さんの閉鎖空間は涼宮さんのものとは対照的で、何一つ変わることなくずっとそこに存在し続けています。いわば、永遠の楽園みたいな場所なのですよ。そこで大宮さんの第三の人格は、佐々木さんの閉鎖空間に入って能力を使い空間に働きかけを行って閉鎖空間を膨張させ、やがて世界中を埋め尽くしてしまおうと考えた。こうすれば、大宮さんとアリスさんの関係は永遠のものになると考えたようです」

キョン「あのおっとりした第一の人格からは考えられないような過激思想じゃねーか」

古泉「ええ。一方、金髪の女性が載っている雑誌を捨てようとしたり、金髪への興味を失っていたのは第二の人格です。アリスさんとの思い出を始めから無かったことにすることで不安から逃れようとする心から生まれた人格でしょう。しかし、そんなことではいけないと大宮さん自身よく分かっていた。だから、第三の人格が生まれたというわけです」

キョン「結局彼女はどうなったんだ」

古泉「いま、朝比奈さんが彼女のところに行っています。大丈夫です、悪いことにはならないでしょう」

キョン「橘は?」

古泉「閉鎖空間が壊れていく様子を見ながら頭を抱えていました。何がいけなかったのか、とね」

キョン「まったく。あいつも懲りないな」

古泉「僕達とは基盤が違いますからね。彼女らの中心にあるのはいつも佐々木さんです。僕らの中心にいつも涼宮さんがいるようにね。ですから、涼宮さんが力を持っている現状を決して受け入れるわけにはいかないのですよ」

キョン「難儀なこった。あとは……そうだ、ヤスミのやつはどうなったんだ?」

古泉「いつの間にか姿を消してしまいましたね。今回は不完全な形での復活だったこともあり、役目を終えたところですぐに消えたのでしょう」

キョン「そうか。にしても、まさか再会できるとは思ってなかったぜ」

古泉「案外、また会う機会もあるかもしれませんよ」

キョン「次会うときは超自然的な現象とは無縁でありたいもんだな」

古泉「どうでしょうね。彼女自身が超自然的な存在ですから」

 ***

- 甲山・山頂 -

アリス「わぁ、すっごくきれいだね!」

忍「この景色をアリスに見せたかったんです。あの頃からずっと」

アリス「そっか。見せてくれてありがとね」

忍「本当はもっと早く来るべきだったんです。そうすればきっと……」

アリス「ううん、やっぱり、こっちの空のほうがずっときれいだよ」

忍「……私も実はそう思っていたところです」

アリス「それにしても、ホントに町中が黄金色に染まるんだね……すごい」

忍「ねえアリス。今から私は、すっごくわがままなことを言います」

アリス「え、なに?」

忍「先日、ハルヒさんにこう言われたんです。『好きなように生きなさい』って。だから私、思いっきり好きなように生きることにしました」

アリス「どういうこと?」

忍「私、ずっとアリスと一緒にいます。どんなことがあっても、どんな困難があっても、私はアリスを離しません。アリスがいやだって言っても、いくらだってだだをこねるつもりです。ね?すっごくわがままでしょう?」

アリス「シノ……ううん。私だって、絶対にシノと離れたくないよ。私だって、シノと離れそうになったらいくらだって駄々っ子になる!」

忍「アリス!」ギュッ

アリス「シノ!」ダキッ

…………
………
……

陽子「あぁ、完全に二人だけの世界だなぁー」

綾「そうね。でも、良かったわ」

カレン「何はともあれ、一軒落着デース!」

国木田「朝比奈先輩、あなたも長門さんも、それに黄緑さんや朝倉さんもだけど、ただ者じゃないみたいでした。僕も少しは関わったわけですし、そこら辺について少しくらい教えてくれないんですか?」

みくる「えっ、あ、あのそれは……う~ん、やっぱり禁則事項みたい。だけど、一つだけ言えるのは、みんなこの世界を大切に思ってるってこと。それだけははっきりと言えます」

国木田「そうですか。それが聞けただけでも安心しました」

 ***

???「こんにちは」

??「あなたは?」

???「私は『あなた』です。あなたが『あの娘』であるのと同じように」

??「そうですか。私と同じような存在がまだいたんですね」

???「ええ。あなたは私の存在に気付かなかったでしょう?でも、私はあなたを知っていました。『あの娘』があなたのことを知らなくても、あなたが『あの娘』のことを知っていたように」

??「そういう構造になっているんですね」

???「『あの娘』が幸せそうで良かったです」

??「きっと、夕日がきれいだからですよ」

???「ええ。私は間違っていました。夕日を美しいと感じられることはとても幸せなことなのに、それに気づかなかったのです」

??「どういうことですか?」

???「晴れた青い空があって、どんよりとした曇り空があって、雨が降ることもある。空はいつもいろんな表情を見せてくれます。だからこそ、人は夕日に赤く染まる瞬間の空を見て美しいと感じるのです。いつも夕焼け空だったら、そんな空を誰も美しいとは思わないでしょう」

??「よく分かりませんが、それがあなたの間違いと関係のある事なのですか?」

???「ええ、大いに」

 ***

- 翌日放課後・SOS団部室 -

アリス「おかげさまでシノはすっかり元気になりました。ありがとうございました」ペコリ

シノ「なんだかみなさんにご心配をお掛けしてしまったみたいでごめんなさい。でも、もう不安な気持ちはすっかり消えて無くなりました。SOS団のみなさんのおかげです」

ハルヒ「当然よ。あたしを誰だと思ってるの?解決できない問題なんか存在しないわ」

キョン(お前は何もやってねーじゃねえか)

古泉「何はともあれ、無事に終わって良かったです」

キョン「俺は無駄に怪我をすることになったがな」

みくる「ケガは大丈夫なんですか?」

キョン「長門に治してもらったんでもう完璧ですよ。ほら、この通り」ウデグルグル

みくる「そっか。それなら良かったぁ」

ハルヒ「とはいえ、依頼を解決した以上お礼は貰わないとね。ま、それはもう着々と準備してもらってるけど」

アリス「えっと、機関誌に載せる記事のことですか?」

ハルヒ「その通り。中途半端な内容は承知無いわよ!みんな、サイッコーの記事を書きあげてきなさい!」

 ***

- その晩 -

佐々木『やあキョン。君から電話を掛けてくるなんて珍しいじゃないか』

キョン「いや、どうしても確認しておかなきゃいけないと思ってな」

佐々木『くっくっ。君が聞きたいのはこの間のことだろう?どうして僕が大宮さんに協力したか、ということだね』

キョン「察しが早くて助かる」

佐々木『あの時の僕の判断が間違っていたというのは、今でははっきり自覚しているよ。やっぱり僕ごときが神にも等しい力を手にして世界を変えてしまおうなんて大それた話だ』

キョン「だったら、なぜお前はそれをしようとしたんだ」

佐々木『簡単なことだよ、キョン。僕はね、人間の生きる目的というのは自分が生きた証を遺すためだと思ってるんだ。それは、子孫を残すということに限った話じゃない。もちろんそれも大切な使命だけれどもね。だが、そこでふと思ったんだ。僕は一体何を遺すことができるだろうかってね』

キョン「相変わらず小難しいことを考えてんだな」

佐々木『そんな時、僕は大宮さんに出会った。僕の閉鎖空間に入れる能力者に会ったのは橘さん以外では初めてだったよ。そして、彼女は僕の閉鎖空間を求めていた。正確には、僕の閉鎖空間の性質である“普遍性”を求めていたんだ。それで、僕はつい考えてしまったんだよ。確かに僕は平均以下の凡人でしかないけれど、彼女の願いを叶える力を持っている。だったら、その力を使うべきなんじゃないかってね』

キョン「それで、大宮に協力したのか」

佐々木『でもそれは、僕の一存だけで世界をひっくり返してしまう行為だ。あまりの傲慢さに自分でも呆れるよ』

キョン「自分の閉鎖空間が膨張して世界を飲み込んでいくってのはどんな感覚なんだ?」

佐々木『うーん、正直自分でもあんまり実感はなかったね。閉鎖空間の膨張ってのは、僕の意志だけで出来ることじゃないんだ。いわば飛行機みたいなものかな。操縦士が大宮さんで、その操縦に従って僕の閉鎖空間が拡大していくような感じだよ』

キョン「何となく分かるような分からないようなって感じだが……まあいい。俺が聞きたかったのはそれだけだ。こんな時間に電話して悪かったな」

佐々木『構わないよ。僕はこれといった趣味を持たない人間だからね。誰かと話ができるだけでずっと時間を有効に使えている気分になる。だから、遠慮せずにまた気が向いたときに電話をくれて構わないよ』

キョン「ああ、そうするさ」

佐々木『やっぱり僕には……そう、例えば君のような他者の存在が必要なんだ。今回だって、キョン達がいろいろと立ち回ってくれたおかげで僕は過ちを犯さずに済んだわけだしね。結局僕は、自分の持っている力は他の人のために使わなければならないなんて言い訳をして、その実手っ取り早く他人の為になっているという実感を得たかっただけなんだ。安易で怠惰な発想だよ。本当に他人の為だというのなら、自分の行動が及ぼす影響を多角的に分析し、結果に対して責任を負うことが出来なければならない。身の程を弁えろという話だよ』

キョン「だが、そうやって自分のやったことを分析して反省するところはお前の良いところだと俺は思うぞ」

佐々木『くっくっ、そう言ってもらえると少し気が楽になるよ。ありがとう、いろいろ話して少し気持ちの整理が出来たみたいだ』

キョン「俺の方も、聞きたかったことが聞けて良かったよ」
Part08へ続く

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