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歩くんですの箱 SS置き場

躍動感を表現するにはどうすればいいんだろう……と日々考え中。

【けいおんSS】唯「このカメラ使ってもいいかな?」(再稿) Part13(最終章)

Part13 (Part12の続きです)
梓「失礼します」

律「あれ?どうした梓?わざわざ教室まで来て」

梓「律先輩。平沢先輩っていらっしゃいますか」

律「ん?唯に用なのか?ってか、梓は唯の知り合いだったの?」

梓「はい、ちょっとお話したいことがありまして」

律「う~ん……、分かった、すぐ呼んでくる」

律「ゆ~い~、可愛い後輩に呼ばれてるぞ~」

唯「分かった~今行く~、って、あずにゃん!?」


律(あだ名まで付けてたのか。いつの間にそんな仲に)

梓「そのあだ名止めてください平沢先輩」

唯「いいじゃん。あずにゃんもそんな呼び方しないで唯って呼んでよ~」

梓「そ、そんな、馴れ馴れしいです///」

梓「そんなことより!ちょっと話があるので来てもらえますか?」

唯「話?もしかして、愛の告白とか!?」

紬「!」

梓「調子に乗らないでください唯先輩」

梓「あ///」

唯「やっと唯って言ってくれたね」

梓「今のは忘れてください!」

唯「どうかな~」

***

唯「屋上まで来る必要あったの……?階段いっぱい上ったから疲れたよ……」

梓「このくらいでへこたれるなんて、栄えある女子高生としてどうなんですか?」

唯「あずにゃんスパルタ……」

梓「もう」

唯「それで、話って?」

梓「ああ、そうでした。その……」

梓「……軽音部のボーカルやってもらえませんか?」

唯「え?私が?」

梓「憂から話は聞きました。去年、先輩は軽音部に入らないことを選んだ」

唯「うん、私みたいが入ったら迷惑かけちゃうから」

梓「今、軽音部のメンバーは私を含めて4人。ギリギリ部活として成り立つ人数は揃いました。」

梓「ですが、今の軽音部にはボーカルが欠けているんです」

梓「澪先輩のことはもちろんご存知ですよね?彼女も軽音部のメンバーの1人で、ベースが上手くて美人で音楽のセンスもきちんと備えています。だから、私は澪先輩にボーカルを期待しました」

梓「だけど、先輩は出来ないって言った。それでは、軽音部は成立しません」

梓「そこで唯先輩、あなたのところのにお願いに来たんです」

唯「私は音楽なんてちっともやったことないよ。カスタネットぐらいしか出来ない。澪ちゃん以外にも、軽音部にはもっと適任がいるし、学校全体にだって勿論適任はいるはずだよ」

梓「ボーカルは軽音部の命です。妥協なんてできません」

唯「だったら」

梓「だからこそです」

梓「憂から聞きました。先輩はカメラをちょっと弄るようになっただけですぐに実力が上達したって」

唯「それとこれとは話が違うよ。それに、私の写真なんてまだまだだよ」

梓「そういう意味じゃありません」

梓「澪先輩も唯先輩も、きっと純粋な心を持ってるんです。ただ、それがそのまま素直さという形に繋がったかどうかの違いが澪先輩と唯先輩の差なんだって、文化祭のときの写真を見てそう思いました」

梓「呑み込みが早いのは、純粋な心を持っている証です。音楽は人の心を浄化するもの。それが出来るのは、浄化された心をもつ人間だけです。だから、純粋な心は音楽にとって最も重要な鍵です。そして、先輩はその鍵を持ってるんです」

唯「そんなことない。あずにゃんは、私を買いかぶり過ぎだよ」

梓「いえ。でも確かに、今の先輩のままでは澪先輩には敵いません」

唯「そりゃそうだよ」

梓「私は、文化祭で『澪先輩の写真の方が好きだ』と言いましたよね。それは、今思えば、澪先輩の写真の方がまっすぐな素直さを感じられたからだと思うんです」

あずにゃんの話を聞きながら、私は澪ちゃんの文集の編集後記の終わりに書かれていた言葉を思い浮かべた。いままであの文章の意味はよく分からなかったけど、ようやく頭の中で繋がってきたような気がする。

世界、風景、「五感」で捉える……

そうだ。あずにゃんの言ってた素直さとはそのことなんだ。
これが、私がずっと探し求めてた答え。

あのクリスマス以来、私は変わってしまった。

色褪せた現実を見て、私は世界が変わってしまったんだと思った。だけど、変わってしまったのは世界じゃない。私の方だ。
自分が信じるものが裏切られたとき、私は自分を信じることが出来なくなってしまった。
もっと普遍的で、客観的なものばかりに答えを求めるようになってしまったんだ。

初めてパッコンを手にしたとき、私は、このカメラがすっごく豊かな感性を持ってて、私たちよりもずっと表情豊かな世界の中を生きてるって思った。

だけど、それは違う。

カメラは正確な目を持っていても感情は持っていない。
パッコンに豊かな世界を与えられるのは私だけなんだ。
私は、ファインダーから見える景色ばっかりにとらわれてた。
だけど、写真はそういうものじゃない。
私が感じた景色をカメラで切り取る。私の思いが写真に宿る。
そんな当たり前のことに、私は気付けないでいた。

ずっと私の目の前にあった、決して割れることのなかったガラスにひびが入っていく。
その隙間から眩い光たちが、次々に溢れてくる。

梓「唯先輩?」

唯「えっ!?何?」

梓「いえ、ぼうっとしてたもんですから」

唯「ごめんごめん」

唯「あずにゃんのお陰で気付けたよ。今までの私が失っていたもの」

ありのままを受け入れること。
自分の感覚に、感情に素直に問いかけること。
それは時にとっても勇気のいることで……でも、目の前にいる小っちゃくてかわいらしい、でも真っ直ぐなまなざしを向けている少女を見ていると、なんだか頑張れそうな気がした。

梓「唯先輩、今、とってもいい表情をしています」

唯「私、がんばるよ。軽音部で、ボーカル頑張る。だからね、一緒に最高の音楽を奏でよう!」

梓「はい。唯先輩、よろしくです!」ペコリ

おわり

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