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歩くんですの箱 SS置き場

躍動感を表現するにはどうすればいいんだろう……と日々考え中。

【けいおんSS】唯「このカメラ使ってもいいかな?」(再稿) Part08

Part08 (Part07の続きです)

時は遡って、夏休みのある日のこと。

夏休みといえば、毎年家から少し離れたところを流れる川のそばでお祭りがあって、河川敷には沢山の出店が並び、近隣だけでなく隣町からも大勢の人がやってきて賑わう。
私も小さい頃は、屋台の綿菓子やかき氷を楽しみにして毎年このお祭りに来たものだった。
だけど、いくら夜とはいっても、8月の残暑の中に大勢の人が集まれば会場はとっても暑い。
暑いのが苦手な私は、ここ最近は家でごろごろするばっかりでこのお祭りに来ることもなくなっていた。


そしてこの日、私は数年ぶりに、憂と一緒にこのお祭りに来ていた。
だらだらしてばっかりの私を動かしたのはパッコンだった。
このカメラのお陰で、私はこの夏例年の3倍は外出するようになったと思う。
私は興味があった。
パッコンならこの夏祭りをどう写し取ってくれるのかなって。

憂の提案で、お祭りには浴衣で行くことになった。
着付けは憂がやってくれた。
慣れない着物姿では少し動きにくいけど、たまにはこういうのもいい。

唯「憂、金魚すくいやろ~」

憂「うん、いいよ~」

店番「いらっしゃい、一回100円」

唯「えっと、これ」

店番「ありがとー、じゃあこれボールとポイね」

唯「じゃあ憂やってみて」

憂「えっ?お姉ちゃんがやるんじゃないの?」

唯「私は横で撮影~」

憂「そんな、お姉ちゃん折角だし」

憂(ちがう、お姉ちゃんは写真撮りたいからお祭りに行くって言い出したんだ)

憂「分かった。すぐポイ破っちゃうと思うけど」

ファインダーの視界の中に憂のポイが入り込んでくる。
ポイはあっという間に一匹の金魚に獲物を絞って水上へすくい上げた。

と、思ったらそこで紙が破れ、小さな水しぶきが上がる。
その瞬間、私はシャッターを一気に切る。

カシャン

パッコンは、金魚が水面へ飛び込む瞬間を鮮やかに捉えた。

憂「ごめんね上手くいかなかった。お姉ちゃんのお金で払ったものだったのに……」

唯「いいよ~良い写真撮れたし」

唯「あ、向こうにりんご飴あるよ~」

唯「こっちにはカラーひよこ~」

憂(お姉ちゃん楽しそう)

唯「あれ、もしかしてあっちにいるの和ちゃん?」

憂「ホントだ」

唯「生徒会の人達も一緒にいる」

唯「の~どかちゃん!」

和「あら唯も来てたの?お祭りに来るなんて珍しいわね」

唯「うん、写真撮りに来たの」

和「へぇ」

唯「カラーひよこもきれいだね」

カシャ

和「しかし、よくここまでいろんな色のひよこを集めてくるものね」

周りの生徒会役員(えっ?)

憂・唯(えっ?)

唯(ジョーク、なのかな……?)

憂(さぁ?)

唯(ジョークかどうか分からないから気まずい……)

唯「あ、あの、私はりんご飴買うから向こう行ってくるね、またね和ちゃん」

和「またね唯」

ぼんやりと白んでいた空もいつしかすっかり暗くなり、提灯の明かりが夜闇に浮かびあがる。
ふと、川の方でドンッと破裂音が聞こえてきた。
向き直ると、対岸から打ち上がった花火が河川の真上で花開く。
私はカメラを縦に構えて、眩い光の粒で彩られる夜空を水面と一緒にファインダーに収める。
カラーひよこなんかよりもずっとカラフルな光が水面に映り込む。
花火に後れて破裂音が聞こえてくるまでのほんの一瞬の間を逃さない。
私は、無我夢中でシャッターを切り続けた。

Part09へ続く

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