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歩くんですの箱 SS置き場

躍動感を表現するにはどうすればいいんだろう……と日々考え中。

【けいおんSS】唯「このカメラ使ってもいいかな?」(再稿) Part04

Part04 (Part03の続きです)
文化祭前日。

私の写真は、文芸部室の一角を借りて行われることになった。文芸部の部員は現在たった1人しかいない。桜高では、部員3人以下の部活は廃部になってしまう規則がある。だから、本来なら文芸部はとっくに廃部になってるはずなんだけど、この部は学校創立当初から存在する伝統ある部活で、文化祭では毎年機関誌を発行してきた歴史があり、由緒ある伝統にピリオドを打つ訳にはいかないとの学校側の判断で例外的に存続が認められていた。

その唯一の文芸部員というのが、秋山澪ちゃんだ。
今年の春、廃部寸前の軽音部でなんとか部員を確保しようと頑張ってたあの3人のうちの1人。


唯「ごめんなさい」

澪「なんでいきなり謝るんだ?」

唯「だって……私が軽音部に入っていればあの部は廃部にならずにすんだのに……」

澪「いいんだよ。私はもともとこの部に入る予定だったしな」

唯「でも……」

澪「気にするな。そんなことより、あの……」

唯「?」

澪「これ……、よかったら読んでみてくれないか」

澪ちゃんは、少し恥ずかしそうに1冊の冊子を差し出す。

唯「文芸部機関誌?」

澪「そう、文芸部では毎年発行することになってるんだ」

唯「これ、もしかして澪ちゃんが1人で書いたの?」

澪「ああ、挿絵とか表紙絵は漫研や美術部に頼んだけどな。あの人達には本当に感謝してるよ」

唯「澪ちゃん……」ポロポロ

文芸部の機関誌はB5判サイズで、厚さは1cmくらいあった。普通に考えてたった1人で書くような量じゃない。澪ちゃんはどれだけ大変な思いをしてこの機関誌を書いたか思い浮かべるだけで、自然と涙がこぼれ落ちてくる。

澪「おい、どうして泣きだすんだよ」

唯「軽音部が廃部になったせいで澪ちゃんはたった1人文芸部に取り残されて、部長になってこれだけの機関誌つくって……全部1人で抱え込んで……」

一気に罪悪感が襲ってくる。
軽い気持ちで軽音部に入部届けを出して、無責任に入部を断って、そのまま軽音部は廃部になってしまった。私は軽音部のみんなの思いを踏みにじって、その上澪ちゃんを1人にしてしまったんだ……。

唯「ほんとにごめん……」

澪「だから謝るなって。これは唯のせいじゃないよ。文芸部に入るって決めたのは私なんだから」

澪「確かに辛いことはたくさんあった。だけど、これは私がやりたくてやったことなんだ」

澪「だから、私は、この機関誌を読んでくれる人がいれば、それで十分だよ」

機関誌を手に取りページをめくると、まず目次が入っていて、続いて校内アンケートや、数々の短編集が収められていた。物語は初々しい恋愛ものとか、ファンタジーとかそんなのが多くて、澪ちゃんって意外に乙女チックな発想をする人なんだなって思った。

唯「澪ちゃん、すごく面白いよ!これ、持って帰ってもいい?」

澪「もちろん。それにしても気に入ってもらえてうれしいよ。正直……ちゃんとできてるか不安だったんだ……」

唯「そんな、すっごく良くできてるよ。きっとみんなびっくりするよ」

澪「ありがとう。そういえば、唯はここに写真を展示するんだったよな」

唯「あ、そうだった。そのためにここに来たんだった、忘れてたよ」

澪「おい」

そのとき、コンコンとドアをノックする音。

澪「どうぞ」

和「入るわよ」

ガチャ

和「唯、ここにいたのね。写真展示用のボード運ぶの手伝ってくれない?」

唯「は~い」タッタッタッ

 ***

和「ここらへんでいいかしら」

澪「そうですね」

和・唯「せーの」

唯「よし」

和「あとは写真を貼るだけね。私は他にも仕事があるから、貼り付けは任せても良いかしら」

唯「うん」

和「じゃあ、これが預かっていた写真よ」

唯「ありがとう」

和「じゃあ、私はこれで。悪いわね、場所使わせてもらって。秋山さん」

澪「いえ……」

ガチャ

唯「よし、どんなふうに貼ろうかな……」

澪「手伝おうか?」

唯「うん、頼んじゃおうかな」

 ***

澪「いい感じで貼れたんじゃないか」

唯「うん、澪ちゃんが手伝ってくれたおかげだよ」

澪「私はちょっとアドバイスしただけだよ。それにしても、ホントに写真撮るの上手いな」

唯「う~ん、まだまだだよ」

澪「十分だって。私もカメラ好きだけど、唯みたいに上手くは撮れない。実は今も持ってるんだけど」

唯「そうなの!?見せて見えて」

澪「これだ、何年か前にパパが譲ってくれた。古いカメラだけど、結構味のある写真が撮れるから手放せなくてな」

唯「すごい!初めて見たよ!ロシアの会社だよねこれ」

澪「よく知ってるな。そうだ、記念に1枚写真を撮らないか?」

唯「いいね」

澪「唯、じゃあちょっとそこに立ってみて」

唯「うん」

澪「じゃあ行くぞ」

唯「澪ちゃんは入らないの?」

澪「これセルフタイマー使えないからな」

唯「そうなんだ」

澪「じゃあ、行くぞ。1足す1は?」

唯「えっ、あれ?えっと」

カシャ

唯「ってちょっと待って」

澪「なに慌ててんだよwでも、これはこれで良い写真になったんじゃないかな、出来が楽しみだ」

唯「じゃあ、パッコンでも」

澪「何?」

唯「ああ、私のカメラ、パッコンって名前なの」

澪「カメラに名前付けてるのか?」

唯「そだよ」

澪「」

唯「澪ちゃんちょっとそこに立って見て。そうそう。じゃあ、ちょっとこの机の上において……これでよし」タッタッタッ

澪「セルフタイマー使えるのか?」

唯「うん。よっと。……澪ちゃん、くるよ」

澪「ごくっ」

カシャン

Part05へ続く

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