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歩くんですの箱 SS置き場

躍動感を表現するにはどうすればいいんだろう……と日々考え中。

【ごちうさSS】記憶よ、もう一度 - Part 09

Part 09

 【9】

千夜「それでどうなの?キスはもうしたのかしら?」

リゼ「キ、キス!?」

シャロ「キス……しぇんぱいとキスなんて……」

 慌てて手に持ったコーヒーカップを落としそうになるリゼさんと真っ赤になって俯くシャロさん。そんな2人をほほえましく見守るわたし達。ここ最近はずっとそんな構図が続いていました。

 すれ違いが始まったあのバレンタインから1か月。シャロさんは無事わたしたちのところに戻ってきて、こうしてまた当たり前のようにわたしたちと一緒にいることが出来るようになりました。今ではシャロさんとリゼさんはもう恋人同士です。告白はリゼさんの方からしたと聞きました。

 ですが……2人の様子に皆さん少しあきれている様子です。

マヤ「まだしてないのー!?もう1か月も経つのに」

リゼ「そ、それは……」

ココア「手は繋いだんだよね?」

リゼ「とっ、当然だ。馬鹿にしすぎだぞ!」

シャロ「昨日のデートでわたしからお願いして……先輩の手、あったかかったぁ」

千夜「それも昨日が初めてだったの!?」

メグ「これじゃあ、キスまでたどり着くのに何か月かかるか分かんないね……」

 うーん、皆さんからすると、2人の恋路はまだまだ前途多難といったところのようです。わたしにはあまりよく分かりませんが。

 わたしには恋だとか、そういうことについての知識がまだまだ足りていないのかも知れません。同い年のはずのマヤさん、メグさんはそうでは無さそうなので、わたしだけついていけていないのは不安です。

チノ「付き合い始めて1か月でキスをしたことがないというのは遅すぎなのでしょうか?」

マヤ「そりゃあそうだろ。ドラマとかじゃキスなんて普通にしてるじゃん」

 なんだ、ドラマの知識ですか。そんなものは信じるに足るようなものではないと思うのですが……。

チノ「ドラマと現実では違うんじゃないでしょうか」

 わたしはすかさず反論しました。その反論は的を射るものだったようで、リゼさんが全力で同意をしてくれました。

リゼ「チノの言う通りだ。人それぞれ違うんだからみんなに合わせる必要なんてないんだぞ!」

シャロ「そうそう。リゼ先輩の言う通りよ。だけどそろそろキスもしてみたい気も……

 シャロさんもそれに同調します。最後の方はよく聞き取れませんでしたが……。

リゼ「と、とにかくキスはまだ早い」

 そうですよね。リゼさんがそういうなら間違いありません。キスというのはそう軽々しくするものではないというわたしの考えは正しかったようです。

チノ「やっぱりキスは結婚してから、ってことになるのでしょうか?」

リゼ「ああ、そういうことだ……って、結婚!?」

シャロ「リゼ先輩!?結婚だなんて大胆ですよぉ」

 あれ、わたしはなにかおかしなことを言ってしまったのでしょうか。2人の顔が真っ赤なのですが。

ココア「結婚式のスピーチは任せて!」

リゼ「スピーチってそりゃ気が早いだろ!それにココアに頼むのはなんだか不安だ……」

千夜「結婚式やるのはもう前提なのね♪」

リゼ「ちょっ!?これな言葉の綾というかだな……ああもうっ」

シャロ「せ、先輩と結婚式……やっぱり教会で挙げるのがいいのかしら……」

 顔を真っ赤にしながら手をバタバタさせるリゼさんに、頬を赤く染めながらも幸せそうに表情をとろけさせるシャロさん。2人を見ていると本当に和やかな気分になります。

千夜「シャロちゃんのドレス姿、とっても楽しみね♪」

シャロ「えっ、ちょっと千夜!?」

マヤ「シャロがドレスならリゼはタキシードか?カッコいい!」

リゼ「私はタキシードなのか……?」

メグ「でも、ドレスを着てるリゼさんも見てみたいな」

ココア「うんうん、きっとすっごく可愛いよね!」

リゼ「かわいいっ!?……あっ、いや、お前らからかうのはやめろ!」

 皆さんの想像も膨らんでいきます。わたしも、お2人がどんな衣装を着るのか楽しみになってきました。もちろんまだまだ先の話になりそうですが。

 そんな先のことに思いを馳せていたらふと思ったことがありました。

 わたしにもいつか結婚する日が来るのでしょうか。

 わたしは真っ白なドレスを着ていて、かっちりとタキシードを着こなしたココアさんがベールを取り去って誓いのキスをしてくれるのです。あれ、どうしてこんなところにココアさんが出てくるのでしょう?意味が分かりません!

 わたしはおかしな想像を振り払おうとして首を振りました。けれど、どんなに振り払おうとしてもココアさんの顔が目の前に浮かび上がってくるのでした。

ココア「チノちゃんどうしたの?」

 ココアさんがわたしの顔をすぐ近くで覗き込んでいました。

チノ「うわっ、コ、ココアさん!?」

 わたしは驚いて思わず飛びのきました。

ココア「そんなにびっくりしなくても……」

チノ「いきなりあんなに顔を近づけられたら誰だって驚きます!」

ココア「そうかな……あれ?顔真っ赤だよ」

チノ「うそっ!?」

 確かに顔に血が上っていくのを感じます。心なしか心臓もドキドキしています。わたしは困惑しました。

チノ「み、見間違いじゃないですか?」

 わたしは、少しずつココアさんと距離を取りながら反論しました。

ココア「そんなことないよ。はっ!?もしかして具合悪いの?」

 しかし、わたしの反論も虚しくココアさんはわたしの額に手を当てました。ひんやりとしたココアさんの手の感触が伝わってきて、それに呼応するようにわたしの中の熱はどんどん上がっていきました。

ココア「ちょっと熱っぽいかも」

チノ「ほんとに大丈夫ですから!」

 わたしはちょっと強引にココアさんの手を振り払いました。そうしないと何かがおかしくなってしまいそうでした。こんなことは生まれて初めてでした。この気持ちはいったい何なのでしょうか?

シャロ「なんだか、今でもまだ信じられないのよね」

 しばらくして、シャロさんがぽつりと呟きました。そのおかげで止まらなかった胸のドキドキが少しだけ落ち着きました。

シャロ「わたし、こんな風にリゼ先輩の隣にいられる日が来るなんて思ってなかった。人工的に作られたわたしを受け入れてくれるなんて……」

 シャロさんの言葉に、リゼさんは恥ずかしそうに俯いて答えました。

リゼ「私の方こそ、シャロに受け入れてもらえるなんて思ってなかった。みんなのお陰だよ。みんながいてくれたから私はNPASSを受け入れて……それでシャロに認めてもらえた」

シャロ「その通りね、みんなには本当に感謝してるわ」

 シャロさんは、そういってわたしたち一人一人を順番に見つめました。真正面から感謝の視線を受け、わたしは少し恥ずかしくなりました。それは皆さんも同じだったらしく、ココアさんなんか見つめられた瞬間目を背けて少しひきつったような表情になっていました。

千夜「そんな風に感謝されるとくすぐったいわ。わたしたちはわたしたちのやりたいことをやっただけよ」

 千夜さんがわたしたち全員の気持ちを代弁しました。一瞬、なにか難しい表情を浮かべていたメグさんもシャロさんの視線を受けると

メグ「そうだよー、みんなが一緒にいられて幸せなのがいいもん」

と笑いました。その言葉に誰もが思い思いに頷きました。この場にいるみんなとの時間がずっと続けばいい、わたしは心からそんな風に思いました。

Part 10に続く

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