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歩くんですの箱 SS置き場

躍動感を表現するにはどうすればいいんだろう……と日々考え中。

【ごちうさSS】記憶よ、もう一度 - Part 01

このブログにSSを上げるのは随分と久しぶりになってしまいました。もっと定期的に上げていきたいところなのですが、とにかく書くのが遅くて辛いね……。

さて、今回はバレンタインにまつわるお話になります。といっても、本当は去年の梅雨くらいから書き始めていて、まさか完成までこんなに時間が掛かるとは思っていなかったのですが、結果的にはちょうどバレンタインの時期に上げることになったのでそれはそれで良かったのかなぁと(←オイ!)

まあ御託は良いとしましょう。今回の作品は本日より21回に分けて投稿していく予定です(今回を除き毎日正午に自動投稿とするつもりです)。ごちうさのキャラクターの可愛らしいイチャラブを楽しんでいただければと思います。

※本作品には、設定の改変や独自の補足が含まれます。

Part 01

 【プロローグ】

 まるで夢みたいで、宙にでも浮かんでいるようでした。

 わたしは、ココアさんの綺麗な瞳をじっと覗き込みました。その瞳にはわたしの姿が大きく映し出されていました。ココアさんはわたしだけを見てくれています。

チノ「ココアさん……大好きです」

 わたしは、その瞳に吸い寄せられるように顔を近づけました。

チノ「目をつぶってください」

ココア「うん……」

 ココアさんの目が閉じたのを確認して、わたしも目を閉じました。

 わたしは、ゆっくりとココアさんに近づいていきます。

 そして次の瞬間、頭からドスンと硬い衝撃を受けました。目を開けるとココアさんの姿はどこにもなくて、わたしはひとり固い地面に頭をぶつけていました。何が起きたのか分からなくて、わたしはその場で茫然とくず折れるしかありませんでした。

ココア「――チノちゃん、ごめん」

 最後に聞いたココアさんの声は、とても遠くから聞こえてきました。

 * * *

 【1】

 カウンターでコーヒーを入れていると、千夜さんがいきなり口を開いて言いました。

千夜「バレンタインに告白しなさい!」

チノ「いきなりどうしたんですか?」

千夜「シャロちゃんのことよ」

チノ「シャロさん?」

シャロ「わ、わたし!?ななななんでよっ、っていうか誰に!?」

 リゼさんは演劇部の手伝いでここにはいません。最初に呼ばれて以来、ときどき頼まれるようになったみたいです。本人は「困ったもんだ」と苦笑していましたが、実は意外とノリノリなのかもしれません。

千夜「誰って、決まってるじゃない」

 千夜さんはシャロさんの質問にニコニコしながら答えました。確かに、シャロさんの様子を見ていたらどんなに鈍感な人でもシャロさんが好きな人が誰なのか気づかない人はいないでしょう。

ココア「シャロちゃん、誰か好きな人いるの!?」

 ここに気づかない人がいました……。

千夜「いい、シャロちゃん。現実は、自分で変えなきゃいつまでも変わらないのよ」

シャロ「なにそれ、どっかの漫画のセリフ?」

千夜「まあとにかく、いい機会でしょ?シャロちゃんだって、ずっとこのままは嫌じゃない?」

シャロ「でも……」

 シャロさんは口ごもります。やっぱり、想いを寄せている人に告白するのは勇気のいることなのでしょうか。恋をしたことがないわたしにはよく分かりません。でも、なんとなくここは背中を押した方が良いような気がしました。

チノ「わたしも応援しています」

ココア「わたしもだよ!よしっ、それじゃあ、シャロちゃんが好きな人に想いを伝えられるように、みんなで作戦会議をしよう!」

 わたしは苦笑しました。シャロさんが好きな人が誰かも分かっていないのにそんな提案をするなんて……。でも、そんなふうにいつだって考えるより先に動いて、いつの間にかみんなの中心になっている、それがココアさんという人なのでした。

 * * *

 日曜午後の甘兎庵。

 ここが第一次作戦会議の会場として選ばれました。もちろんリゼさんには秘密です。

ココア「ただいまより、『シャロちゃん告白大作戦』第一次作戦会議を始めます!」

シャロ「そんな恥ずかしい作戦名やめてよ……」

 ココアさん、ノリノリなのはいいですけど、さっそくクレームが来てますよ。

ココア「バレンタインは一週間後。時間はあんまりないし、どんどん案を出していこう!」

シャロ「だからわたしは別に……」

千夜「わたしは、なに?」

シャロ「わたしは……やっぱりいい」

チノ「シャロさん、あまり乗り気ではなさそうですね」

シャロ「いや……良いのかなって」

チノ「何がでしょう?」

シャロ「2月14日って、リゼ先輩の誕生日でもあるのよ。そんな大切な日をわたしが壊してしまったら……」

 確かに、それは躊躇うのも分かります。世間ではバレンタインは好きな人にチョコレートを渡す、それだけの日ですが、リゼさんにとってはそれ以上に特別な日なのですから、その日に告白する人が背負うものは大きいですよね。
 
千夜「難しく考えることなんてないわ。たまたま誕生日とバレンタインが重なってる、めでたいことじゃない?普通に誕生日おめでとうって言って、プレゼントを渡して、それから想いを伝えればいいだけ」

 そういう柔軟な考えができるのは、わたしには無い千夜さんの魅力だと思います。

シャロ「でも……」

 シャロさんは、それきり黙ってしまいました。きっと、シャロさんの中でもいろんな考えが渦巻いているのでしょう。

千夜「シャロちゃん、まずリゼちゃんに何をあげるのかは決めたの?」

シャロ「それは一応考えてあるけど……」

ココア「なになに?何をあげるの?」

シャロ「チョコレートのお菓子よ。手作りしようかと思ってるわ」

 さすがシャロさん、女子力が高いです。

ココア「へぇ~、シャロちゃんお料理得意だもんね」

千夜「渡すものはシャロちゃんに任せちゃって大丈夫そうね。あとはどんなシチュエーションで渡して、どうやって告白に持っていくか、ね」

ココア「う~ん、チノちゃん何か良い意見ある?」

 えっ、まさかそれを振られるなんて思っていませんでした。どうしましょう、答えなど準備してはいませんけど……。

チノ「なんでわたしなんですか……まあいいですけど。そうですね、過去に告白されて嬉しかったシチュエーションとかを思い出して、参考にしてみるのはどうでしょう?」

 言ってはみましたが、わたし自身にはそういう思い出はありません。高校生のみなさんならそういう思い出の一つや二つありそうですし、頼りになるでしょう。

千夜「過去の経験ね……わたしは経験がないし、ココアちゃんはどう?」

ココア「うーん、あったかなぁ?」

 ココアさんは、しばらく『海に映る月と星々』をつつきながら考え込んでいましたが、

ココア「あんまり思い出せないや」

と答えました。まあ、ココアさんですし。

ココア「今なにか失礼なこと考えなかった?」

 あれ、バレてしまいましたか。

チノ「……なんのことでしょう」

 とりあえず口笛ではぐらかしておきましょう。

チノ「シャロさんはどうですか?昔、誰かに告白されたりしたことはないんですか?」

シャロ「そんなの無いわよ……」

チノ「そうですか……」

 あれ、高校生のみなさんだったらもう少しそういう経験をしているものだと思ったのですが。わたしが高校生に夢を見すぎていただけなのでしょうか……。

ココア「食べる?」

チノ「え?」

 視線を上げると、ココアさんが白玉を載せたスプーンをわたしの目の前に差し出していました。わたしが困っていると、ココアさんは
 
ココア「おいしいよ」

と言ってわたしに笑いかけました。

チノ「では、遠慮なく……」

 戸惑いながらも、わたしは白玉をほうばります。
 
チノ「おいしい」

 口の中に優しい甘みとやわらかな食感が広がりました。中に入っている栗の少し硬い食感がアクセントになっているのもポイントです。
 
ココア「でしょ?」

 ココアさんは満面の笑みを浮かべ、自分で作ったわけでもないのになぜかちょっと自慢げでした。でも、千夜さんも嬉しそうにしていたのでよしとしましょう。
 
千夜「美味しいって言ってもらえるとやっぱり嬉しいわ」

 そのお気持ち、喫茶店の娘としてはとてもよく分かります。

 あれ、というか今、わたしココアさんのスプーンから食べましたよね。これってもしや間接キス……って、なんてバカなことを考えているんでしょうわたし!?何とか動揺を押し隠してこのどうしようもない思いつきを振り払おうとしました。でも、どうしても頭の片隅にひっかかってもやもやがおさまりません。
 
ココア「どうしたのチノちゃん。顔赤いよ?」

 平静を装っていたつもりでしたが、ココアさんには気づかれてしまったようです。ココアさん、無駄に鋭い。
 
チノ「あ、赤くなんかありません。そ、そんなことより、今はシャロさんの話でしょう?みなさん恋愛経験がないんじゃ体験談は参考に出来ませんよ。どうするんですか?」

 よし、うまく話題を転換できました。我ながらナイスプレーです。

ココア「うーん……。じゃあ、経験がありそうな人に話を聞いてみようよ!」

 なるほど。

チノ「誰か心当たりはあるんですか?」

ココア「そうだねぇ、まずは……」

青山「私の出番でしょうか?」

チノ「青山さん!?いつからそこに……」

 もう、心臓に悪いですよ。

青山「夕暮れの校舎、西日に照らされた屋上。そこに立つ二人の影は長く伸びて、背後にある給水塔に影絵を映し出していました」

シャロ「唐突に現れて唐突に語り始めたわね」

千夜「でも夕日の校舎の屋上、ね。確かにロマンチックだわ」

青山「『何の用なんだ?こんな場所に呼び出して』一人が尋ねました」

青山「聞かれた方は、何度も口を開きかけては、躊躇うように口を引き結ぶという動作をしばらく繰り返していましたが、ようやく決心がついたように相手の方へ振り向きました」

青山「そのときです。強い風が吹いて、振り向いた少女はよろめいてそのまま正面にいる少女の胸に飛び込むように倒れこみました」
 なんでしょう。この語り、いつまで続くんでしょうか……。

青山「『どうしたんだよ、大丈夫か!?』正面にいる少女は、倒れこんできた少女を慌てて受け止め、かばうように抱き留めました」

青山「『気をつけろよ』」

青山「抱き留められた少女は、堰を切ったように泣きながら、思いの丈を訴えました」

 この話にはまだ続きがあるのかと思いましたが、青山さんはそこで口をつぐみました。あとはあなた達で考えなさい、ということなのでしょうか。

千夜「さすが小説家ね。感動しちゃったわ!」

ココア「この話、青山さんの体験談?」

青山「……そうですね。現実とは、記憶です。そういう意味では、そうとも言えるかも知れません」

 なんだか意味深なセリフですね。どういう意味なのでしょうか?

ココア「どういうこと?」

 ココアさんも同じことを思ったようです。

青山「実際にあったことかどうかなんて、さして問題ではないということですよ」

ココア「なんだかよく分からないけど、とにかく参考になったよ!ね、シャロちゃん」

シャロ「わたしに同意を求められても……」

ココア「だって、実際にリゼちゃんに告白をするのはシャロちゃんだからね」

シャロ「わたしはまだ何も……」

チノ「夕暮れの屋上というのは確かにいいと思います。ですが、青山さんの話に合わせるにはいくつか問題があるのではないでしょうか」

千夜「どういうことかしら?」

チノ「まず、屋上というのは簡単に入れる場所なのでしょうか?普通は鍵が掛かっていると思うのですが」

 それとも、高校というところは誰でも屋上に入れるものなのでしょうか?

千夜「これを使えばいいんじゃない?」

シャロ「ピッキングツール?なんでそんなもの持ってるのよ!?」

千夜「ただの針金よ」

チノ「犯罪です」

千夜「冗談よ♪シャロちゃんの学校はお嬢様学校だし、誰でも入れたりするんじゃないかしら?」

 お嬢様学校だと屋上に入れるという道理はないような気がしますが……。

シャロ「そういえば……確か屋上は緑化されてたわね。園芸部もそこで菜園をやってた気がするし……でも、そうすると屋上は大体人がいると思うんだけど」

 本当に入れるんですね。確か、屋上を緑化しようとすると土がとても重たいので、建物と屋上を切り離して間をバネみたいなもの?でつなぐと地震対策になる、というのがお父さんが読んでいる雑誌に載ってた気がします。仕組みはよく分からないですが……シャロさんの学校もそういう風になっているのでしょうか。

チノ「それが第二の問題です。他に人がいたら、告白どころではなくなるんじゃないかと」

ココア「そうかな?気にしなきゃいいと思うんだけど」

 ココアさんは気にしなさすぎです。
 
千夜「確かに、さすがに人前で告白するのはちょっと恥ずかしいわね」

チノ「それに、天気が良くなければ夕焼けにはなりません」

青山「舞台は重要ではないのです。大事なのは心の持ちようですから」

ココア「屋上じゃなくてもいいなら校舎裏なんてどうかな?人もいなさそうだし」

千夜「わたしは公園が良いと思うんだけど」

シャロ「何よそれ、思いっきりさらし者になるじゃない!」

千夜「そうかしら?公園ならカップルなんて珍しくないし、逆に目立たないんじゃない?」

シャロ「でも……」

チノ「案外いいかも知れません。千夜さんの言うことも一理あります」

ココア「いいねいいねっ!公園のベンチで膝枕、なんてなんだか憧れるな~」

シャロ「膝枕……そっ、そんなの早すぎよっ」

 シャロさん、顔が紅くなってます。

 話がまとまった頃には日も暮れて、街灯がちらほら点灯し始めていました。

ココア「次の作戦会議はバレンタインの前日、場所はここ!みんなよろしくね!」

 ココアさんの威勢のいい一言で第一回の作戦会議は幕を閉じました。

Part 02に続く

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